エッフェル塔を望むパリ7区の広場、シャン・ド・マルスに集まったマクロン大統領の支持者は、その瞬間、フランス国旗やEU旗を振りかざして喜びを分かち合った。テレビのインタビューに応じた閣僚の1人は「(結果に)大変満足している」と安堵の表情を浮かべた。
胸をなでおろす欧州連合各国
世界中の注目を集めた仏大統領選挙は世論調査の予想通り、マクロン大統領が勝利を収め、2027年までの2期目の任期を迎えることになった。イスラム教徒が髪を隠すヒジャブ(スカーフ)の公共の場での着用禁止などを公約として掲げたル・ペン氏に対し、「極右嫌い」の票がマクロン氏に流れた面が大きい。
決選投票の結果が明らかになった後、シャン・ド・マルスを訪れたマクロン氏も「多くの国民が私に投票したのは、自らが提唱した考えを支持したためではなく、極右を阻止するためであることもわかっている」などと述べた。
マクロン氏とル・ペン氏が争った決選投票で焦点の1つとされていたのが、10日に行われた1回目の投票で両氏に次ぐ3位につけた急進左派「不服従のフランス」のジャン・リュック・メランション氏の票の行方だった。20%超の票を獲得していた同氏は、大勢が判明した直後、支持者に対して「ル・ペン氏には投票するな」と繰り返し呼びかけた。
これを受け、1回目でメランション氏に投票した有権者の一部がマクロン氏支持に回った可能性がある。メランション氏は決選投票の結果について、「フランスはル・ペン氏に将来を託すことを明確に拒否した。これはわが国民の団結にとって、とてもいいニュースだ」などと語った。
マクロン氏のこれまでの「貯金」が効いた面もありそうだ。欧州委員会統計局(EUROSTAT)によると、フランスの失業率は2020年5月に6.5%と、2017年の大統領就任以来の低水準を記録。データの確認が可能な2003年以降でみると最も低い。その後、新型コロナウイルス感染の拡大で一時、9%台まで跳ね上がったが、今年2月時点では7.7%まで再度低下している。
とはいえ、マクロン氏の新型コロナウイルス感染対策も支持された一因だろう。ワクチンの接種を事実上強制。ワクチン未接種者を「うんざりさせてやりたい」などとスラングを使って批判した際には反発を招く場面もあったが、感染の抑制と経済活動の両立を目指す姿勢が一定の評価を集めた格好だ。