医学誌『JAMA Ophthalmology』に掲載された研究論文によれば、バイアグラなどのホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害剤を日常的に服用している男性は、漿液性網膜剥離(SRD)、網膜血管閉塞症(RVO)、虚血性視神経症(ION)という3つの重大な眼疾患のうち、少なくとも1つを発症する確率が85%高い。
この研究で、ブリティッシュコロンビア大学のチームは、ヘルスケア企業IQVIA(アイキューヴィア)のデータベース「ファー・メトリクス・プラス(PharMetrics Plus)」の登録者のなかから、バイアグラ、スタキシン、シアリス、ステンドラなどのPDE5阻害剤を日常的に服用していた21万3033人を対象に選び出し、2006年1月1日から2020年12月31日まで経過観察をおこなった。
その後、この男性たちの経過を、PDE5阻害剤を日常的に服用していない4584人の男性たちの経過と比較した。観察期間からさかのぼって1年以内に、SRD、RVO、IONのいずれかの眼疾患の診断を受けたことがある男性は分析から除外された。PDE5阻害剤服用群と対照群の平均年齢は、いずれも64.6歳だった。
観察期間中の発症者は、SRDが278人、RVOが628人、IONが240人だった。SRD、RVO、IONと診断された人々は、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、睡眠時無呼吸症候群などの持病を抱えている確率が、より高かった。
しかし、こうしたリスク要因を統制してもなお、日常的にED治療薬を服用している人は、3つの眼疾患いずれかを発症する確率が、対照群よりも85%高かった。
PDE5阻害剤の継続服用者は、対照群と比べて、SRDを発症する確率が158%、RVOを発症する確率が44%、IONを発症する確率が102%高かった。これは、年間1万人あたりSRD症例3.8件、RVO症例8.5件、ION症例3.2件の増加に相当する。
滲出性または漿液性の網膜剥離(SRD)は比較的まれな疾患で、漿液が網膜の下に蓄積し、血管が届かなくなることで起こる。深刻な疾患であり、緊急治療が必要だ。