美しい風景の中で描かれる芸術と実生活、男女の倦怠。「ベルイマン島にて」

『ベルイマン島にて』4月22日(金)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開 / 配給:キノフィルムズ / (c) 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma

『ベルイマン島にて』4月22日(金)シネスイッチ銀座ほか全国順次公開 / 配給:キノフィルムズ / (c) 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma

フォーレ島はバルト海に浮かぶ小さな島だ。スウェーデンの首都ストックホルムから南へ約200キロメートル、中世のハンザ同盟時代の城壁や砦が残るゴッドランド島の北端からフェリーに乗って島へと渡る。
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この島での観光客の目当ては、海岸沿いに広がる奇岩群(ラウク)。海水が岩を侵食してできたラウクは、犬のかたちに見えたり、人の顔を想像させるものであったり、大自然が造形したミステリアスなアート作品のようだ。

もう1つこの島を有名にしているのは、映画監督の巨匠イングマール・ベルイマンが撮影に訪れ、晩年をこの地で亡くなるまで過ごしたことだ。島にはベルイマンの自宅や仕事場、試写室まであり、ベルイマン・センターという施設を中心にこの20世紀を代表する監督の足跡に触れることができる。

映画「ベルイマン島にて」は、新作を構想するためにフォーレ島を訪れた、互いに映画監督である男女の揺れ動く心情と、危うい関係を描いた作品だ。季節は北欧の短い夏、光あふれるフォーレ島の風景を随所に映しながら、この年齢差カップルの「芸術と実生活」が、前半、ドキュメンタリータッチで綴られていく。
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20世紀の巨匠監督が愛した島が舞台


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監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ / 出演:ヴィッキー・クリープス、ティム・ロス、ミア・ワシコウスカ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー /(c) 2020 CG Cinéma ‒ Neue Bioskop Film ‒ Scope Pictures ‒ Plattform Produktion ‒ Arte France Cinéma

スウェーデンのフォーレ島にやってきたクリス(ヴィッキー・クリープス)とトニー(ティム・ロス)。クリスは飛行機の機中から不調を訴え、アメリカに置いてきた幼い娘に会いたいと悲嘆に暮れていた。

車を駆って、フェリーで島へと渡るが、2人の間には微妙な空気も流れている。島では敬愛するイングマール・ベルイマン監督ゆかりの建物に滞在する2人だったが、クリスはあえて自分の仕事場を少し離れた風車小屋に定める。トニーとの距離を感じさせる暗示的なシーンだ。

ひと夏をこの島で過ごすことになっているクリスとトニー。2人を迎えたベルイマン財団の人たちとの会食の席で、クリスはベルイマン監督が映画製作にかかりきりで9人いた子どもたちの世話を歴代の妻に任せていたというエピソードを聞く。クリスが、好きなアーティストだがその人生には違和感を抱くと疑問を表明すると、会食の場は凍りつく。

トニーは既に一家を成した映画監督で、クリスのキャリアはそれに比べるとまだ新人のようなもので、彼女はその関係に焦燥も感じていた。財団が企画したトニーの作品の観賞会では、上映後のトークショーからクリスは抜け出し、1人で島の探索に出かける。その途中、クリスは彼女が監督した作品を観たという青年と出会う。

トークショー後はトニーと一緒に、監督ゆかりの地をめぐる「ベルイマン・サファリ」に参加する予定だったクリスだったが、青年の「サファリで行かない場所を案内する」という言葉に誘われ、彼の運転する車に同乗して島めぐりを始めるのだったが……。
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文=稲垣伸寿

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