せめて月に一度、可能なら二度でも三度でも、誰にも邪魔されず、リモートワークでも、寛ぎでも、遊びでも、自分のために滞在してみるといい。
日本のホテルは旅館の歴史と相俟って、伝統的かと思えば西洋のホテルのごとくスタイリッシュに最新鋭設備を纏う、東西融合の技や感性はピカ一だ。もてなしも、デザインも、世界レベルへと進化を遂げている。
まずは週末、金曜日の夜にチェックイン、ゆったりと日曜日が終わるまで、我儘な時を満喫するのが大人のホテルの流儀である。
ホテルジャーナリスト せきねきょうこ
2022年に入ってからも、日本全国に続々と新規開業ホテルの情報が舞っている。世界中でなかなか抜け出せないコロナ感染症蔓延、そして深刻な紛争。だが、日本のホテル業界は歩みを止めていない。
そんな中、新年を迎えた頃、日本を代表する高級ホテル「ホテルオークラ」から京都に「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」の新規開業のニュースが届いた。開業日は1月20日、噂は以前から聞いていたが、開業との嬉しい知らせに訪れるタイミングを狙った。
ホテルの庭園から撮った夜景。北側の客室からは山並みも見える
リリースには「GO ONが手掛ける『新時代の京の美意識』と触れ合うホテル」とあり、オークラブランドとしては日本国内で20年ぶりの開業、さらに大型ではなく、“別邸”らしいスモールラグジュアリーホテルとしてのデビューである。「GO ON」とは、京都の先進的な伝統工芸を担う、期待の後継者6名によるプロジェクトユニットだ。ホテルオークラはそのユニットとコラボレーションをし、未来に継ぎたい工芸をホテル館内に鏤めている。
「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」がある洛東・岡崎エリアは、銀閣寺、平安神宮 南禅寺といった歴史的な神社仏閣に囲まれ、多くの美術館 博物館などを有する文化的エリアである。何よりも琵琶湖疏水に沿って続く哲学の道や、魅力的な京都情緒を堪能できる地域であり、文化的にも、自然環境としても、岡崎は京都近代化の礎となった‘びわ湖疎水’の歴史を纏う特別なエリアなのである。
一方、「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」は、親鸞聖人草庵跡と伝わる寺院「真宗大谷派岡崎別院」に隣接して建ち、ホテルのロビーやレストランの大きなガラス窓からは歴史的な寺やその庭園が望め、京都にいる臨場感が伝わってくる。
広々としたロビーエリア。到着後、奥のラウンジスペースでウェルカム・ドリンクをいただく
印象的なのは、ホテルのエントランスを入ると、ロビーカウンターからラウンジへ、そして奥に続くレストランへと、仕切りや壁の無い空間が広がり開放感があること。その内観を注視すると、銅線を一本づつ編み込んだ緻密な作業の職人技「金網つじ」の照明器具や、西陣織の老舗「細尾」が手掛けた西陣織による壁紙、客室へと向かうエレベーターホールには老舗創作竹工芸メーカー「公長齋小菅」の簾虫籠など、随所に見逃してはもったいない“京都美”の現代工芸が鏤められている。
美しい“金網つじ”の照明器具