様々な産業・分野の大手企業や公的機関に向けて、経営戦略の策定から実行まで、End to Endでのソリューションを提供している。
同社が手掛ける案件には、大規模プロジェクトも多い。一企業の支援のみならず、業界全体にイノベーションを巻き起こす、そんな壮大なスケールの案件も数多、進行している。
同社には最前線でそうした案件の獲得を手掛けるセールス分野のプロフェッショナル集団が存在する。同チームには、数年にわたる大規模な変革プログラム「ディール」を組み立てる役割があり、アクセンチュアでセールスに携わる醍醐味が凝縮されているという。
その最前線で活躍するマネジング・ディレクターの奈良綾子に、話を聞いた。
不遇の新人時代。仕事の楽しさに目覚めた運命のアウトソーシング案件
奈良とアクセンチュアとの出会いは19年前。当時、奈良はアメリカの大学を卒業し、現地で1年ほどインターンをしていた会社から、正式採用のオファーを受けていた。
しかし奈良は「こんなに簡単ではいけない。もっと荒波に揉まれなければ。そのためには、日本で大変な就職活動を経験する必要がある」と考え、帰国を思い立つ。そこでまずは練習にと、ボストンで開催されたキャリアフォーラムに参加。80ほどの企業が出展していた中、奈良はアクセンチュアへの就職を決めた。理由は、2つある。
「多種多様な業種・業界の支援を、プロジェクト単位で経験できる点。あとは、日本では2年も就職が遅れることになるので、アクセンチュアならすごいスピードで仕事のやり方を学べるだろう、という目論見もありました」
奈良はその後、帰国。素材・エネルギー領域のコンサルタントとしてキャリアをスタートするが、新人時代の自分を落ちこぼれだったと振り返る。
「相当なポンコツだったと思います。第一志望の部門に配属されたのに上手くいかず、だいぶ燻っていました」
しかしそんな奈良の前に、突然道が開ける。通信・メディア・ハイテク領域の提案活動にアサインされたのだ。
「それは当時、アクセンチュアジャパンでは初といえるほど大規模なアウトソーシング案件の提案でした。全世界のアクセンチュアからエキスパートが集合し、日本側には当時の社長や現副社長、トップクラスの専門家が肩を並べていて。
そうした一流の人材が、日夜議論を繰り広げながら大きなビジネスを創り上げていく様子を目の当たりにしました。この仕事はすごく面白いんじゃないか、と心が躍ったのを覚えています」
一転、仕事の楽しさに覚醒した奈良は、その後、複数のアウトソーシング案件を経験し、徐々にセールスに携わるように。2016年から製造・流通本部のセールスチームに所属し、大型案件のセールスを任されるプロフェッショナルへと進化を遂げた。
「できない」は言わない──大規模案件を動かすセールスのプロとしての矜持
アクセンチュアにおけるセールス=営業は、一般的な意味での物やサービスを売るというそれとは大きく異なる。同社におけるセールスとは、クライアントの変革や新たな価値を生み出すための「ディール」の創出を意味する。
セールスのプロセスは、クライアントと対話してディールを発掘するところからはじまり、様々な領域の専門家を巻き込んで提案を取りまとめ、契約を締結、アフターフォローまで、複数の工程がある。
アクセンチュアで扱う案件は大規模かつ複雑で、複数年にわたることが多い。そのため、特定のお客様企業との関係を築き、全てのプロジェクトに責任を持つ「クライアントアカウント リード」と、特定のプログラムを組み立て、提案、契約を担う「セールス」に役割が分かれている。
「クライアントアカウント リードは、日頃からお客様に提供する複数のプロジェクトに関わり、CxOクラスと対話を重ねています。その中で様々な経営課題を捉まえ、変革の方向性を導き出していきます」
セールスのメンバーは、クライアントアカウント リードと共にお客様の課題やニーズをディスカッションしながら、具体的なサービスに落とし込む。そして1つの変革プログラム、ディールとして組み立てた後、交渉、契約を経て、デリバリーチームに引き継いでいく。
奈良が担当するのは、こうしたセールスのフェーズだ。つまり、大規模プロジェクトの契約を結べるか否かを左右する、重要な役割を担っているのだ。
「達成するべき目標や、そのために必要となる様々なソリューション、価格、契約条件について、互いにどう折り合うか、お客様とアクセンチュアとでギリギリの交渉が続けられます。
お客様も経営戦略に関わる大きな投資をする訳で、我々もお客様の期待に全身全霊で応えたい。でも、アクセンチュアにも譲れないものもある。お互いWin-Winになるような解を見つけられるように、真剣勝負で臨んでいます」
それだけに、契約成立時やプレスリリースが出された時の達成感には、並々ならぬものがあるという。そんな奈良に、プロフェッショナルとしての仕事へのこだわりを聞いてみると、
「案件ごとに魂を込めて仕事をすること。また、基本的に仕事は断らないスタンスです」
との答えが返ってきた。そして、仕事を断らない理由をこう続けた。
「できませんと言ったらそこで終わりじゃないですか。できないと言うより、どうしたらできるかを考えたい。アクセンチュアにはそういう発想をしやすい土壌があるんです。例えば日本では前例がないことでも、社内のネットワークにアクセスすれば、全世界のどこかに、スキル・経験・知見を持つメンバーがいて、誰かしらが道を照らしてくれます」
その土壌とは、「One Global Network」を掲げる同社の全世界50カ国、69万9,000人以上(2022年3月現在)のメンバーとの社内ネットワークだ。
例えば昨年手掛けた、大手化粧品会社のDXを飛躍させる戦略的パートナーシップ・ジョイントベンチャー設立の案件。全世界から注目を集めるほどの大きなディールであったが、奈良はアクセンチュアのグローバルCEO ジュリー・スウィートともワシントン~東京間でやりとりを重ね、膨大なアドバイスをもらったそうだ。
誰かがヒントを与えてくれる。それがアクセンチュアの強み
元来、外資系のコンサルティング会社というと、個人の能力で独り勝ちする文化が強いように思われがちだ。中でも、営業成績が評価の要となるセールス職となれば、なおさらだろう。
「いいえ、アクセンチュアはとてもコラボレーティブ。みんなで創り上げていく文化が強いのです。協力を厭わない人、誰かのために何かすることに喜びを感じる人、そんなメンバーの集合体です」
さらに同社では昨今、「One Accenture」「Shared Success」といったメッセージを標榜。社内外のメンバーやパートナーとの団結力を強め、協力してイノベーションを起こそうとする動きが加速している。
「実際、私1人でできることは何もありません。経営課題も多岐にわたり、テクノロジーも高速で進化する中、すべての仕事においてメンバーと協働しないと、1つの変革プログラムとしてカタチにすることなんてできないですから」
また、セールスフェーズでは、奈良が「毎日が事件」と喩えるほど予期せぬ出来事が頻繁に起きるという。
「お客様にとっても真剣勝負なので、日々様々なリクエストをいただきます。そのため対応すべきアクションが多数生まれて、頭を悩ますことも。
そんな時は、社内の様々なプロフェッショナルにアドバイスを求めます。例えばお客様の現場を熟知し、業界やソリューションの専門家であるコンサルティング、ソリューション部隊、ビッグディールの経験が豊富なシニアリーダーシップ、法律・ファイナンスの専門家などです。
行き詰まった時でも、自分では考えつかないようなアイデアを提供してくれる人が、この会社にはいます。必ず誰かがヒントを与えてくれる。そこはアクセンチュアの強みですね」
ビジネスと社会貢献の融合を目指して
奈良の仕事スタイル。それは一度ディールがはじまれば全身全霊で臨み、クローズしたら1ヶ月程の長期休暇を取得するという、メリハリが利いたものだ。
「昨年は休暇を利用して、東日本大震災跡地のワイナリーに行きました。旅先を選ぶキーワードに、『社会貢献』を入れています。それと大好きなワインを掛け合わせ、復興につながればいいなと考えました」
そんな奈良は、4年前から社内のコーポレート・シチズンシップ(社会貢献活動)で、社員のボランティア活動を推進するチームのスポンサーをしている。
「社員に向け、様々な社会課題をテーマにしたボランティアプログラムを企画・提供しています。でも実は最初、フラストレーションを感じていたんです。参加率が振るわず、まだまだ社会貢献は一部の志の高い人のもの、ということなのかなと」
しかしCEOのジュリー・スウィートが、「レスポンシブル・ビジネス」=ビジネスの営みそのもので社会に貢献する、というメッセージを発信。それを受けて奈良は、あることに気づいた。
「お客様が抱える課題は時代によって変わります。かつてはコスト削減やグローバル化、そしてDX。ここ数年では、サスティナビリティの実現が新たな軸になってきたと実感していて。
となれば、環境負荷を削減する製造、物流や商品、人権、平等を重視するお客様のサスティナブルな事業活動そのものが社会への貢献であり、バリューチェーンでつながる世界中にインパクトを与えられる......。そう、ようやくビジネスと社会貢献がマージする時代が来たと思いました。
アクセンチュアジャパンでセールスとコーポレート・シチズンシップの融合をリードしていく、それが今後の自分のミッションだと考えています」
17年前、新人の奈良を仕事に覚醒させたのは、世界中から集結したプロフェショナルたちが大型案件に挑む姿だった。そしてこれからは、彼女がプロフェッショナルとしてクライアントや社員たちを、レスポンシブル・ビジネスの実現に目覚めさせる番だ。
彼女が10年後、20年後、アクセンチュアジャパンとクライアントにどんな変化をもたらすのか、覗いてみたいものだ。