IMFのチーフエコノミスト、ピエールオリビエ・グランシャは見通しを下方修正した主な理由として、ウクライナでの戦争による経済的ダメージが引き続き世界の生産に打撃を与え、インフレに拍車をかけると考えられることを挙げた。とくに、食品やエネルギーが急激に値上がりしていることにも言及した。
ロシア産原油・天然ガスやウクライナ産小麦の供給混乱が商品市場を「地震波」のように揺さぶっていくだろうとも警鐘を鳴らした。
グランシャは、多くの国にとってインフレは「今そこにある危機」であり、短期間では収束しそうにないとも指摘。中央銀行は利上げに向けて断固とした行動をとる必要があるが、その際は経済成長を損なわないようにしなくてはならないとも強調した。
世界経済の下振れリスクはウクライナでの戦争やインフレ以外に限らない。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)は引き続き課題となっているほか、IMFは不透明な状況が続くなかでの金融の不安定化や社会不安の増大にも警告を発している。
これに先立ち、世界銀行も世界全体の2022年の成長率予測を以前の4.1%から3.2%に下方修正していた。米国のシンクタンク、ピーターソン国際経済研究所も、2022年と2023年の世界経済成長率は3.3%に減速するとの見通しを明らかにしている。