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2022.05.31 16:30

フェラーリ「296GTB」、次世代のスーパー・スポーツカーの実力は


サーキット走行向けの「アセットフィオラーノパッケージ」が採用された「296GTB」も試す好機に恵まれた。スペインの富豪が所有し、世界の有名サーキットのコーナーをつなぎ合わせたような設計のモンテブランコは、非常にテクニカルなコースである。

試乗車として選んだのは、フェラーリのカンパニーカラーであるイエローのボディにシルバーのレーシングストライプが施されたモデル。熱心なファンであれば、往年の名車を思い出す伝説的なボディカラーだろう。



真のスーパー・スポーツカーとは


前夜に元レーサーで機械工学の学位も持つラファエル・デシモーネ氏によるレクチャーを受けたあと、さらに慣熟走行を経て、サーキットでの全開走行を許される。停止から100km/hまでわずか2.9秒、最高速は330km/h以上を達成するという俊足ぶりを試そうと、アクセルペダルをぐっと踏み込むと、強大な加速に身体がシートに押し付けられそうになる。

電気モーターの特性を利して強大な加速を生むが、あくまで“電気ターボ”のような役割を担う。V6エンジンから湧き上がるトルク感や、キャビン内に響くエギゾーストノートの魅力を、決して削いではいない。

フェラーリ自慢のマネッティーノで「レース」モードを選択して、教科書通りにアウトアインアウトで第一コーナーに入っていくと、2600mmのショートホイールベースと低重心の相乗効果によって、スッと気持ちよく鼻先を曲げていく。タイヤがグリップを取り戻した瞬間、アクセルペダルに置いた右足に力を込めると、路面をぐいっと捕まえて、またたく間に加速する。



余計な電子制御を抑えつつ、よりダイレクトな走行フィールが得られるため、スポーツカーらしい素直な走りを堪能できる。アップダウンが続く複雑なコーナーでも、姿勢を崩すことなく、安定した走りっぷりだ。「CTオフ」のモードでは、リアの滑りを許すため、ドリフト風の走行もできる。

初採用の6wayのシャシーセンサーに加えて、複数のビークルダイナミクス制御システムも初採用しているが、無理やりクルマを曲げる電子制御は搭載していない。ブレーキを力いっぱい踏んでも、ふらつかずに、しっかりと路面を捕まえながらクルマを走らせることができる。

最終コーナーの出口で、アクセルペダルを踏み込んで、メインストレートを全開フルスロットルで駆け抜けた刹那、圧倒的な加速感とともに、“真のスーパー・スポーツカー”とは何かを体験できた気がした。
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文=川端由美

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