その乗り味を吟味していこう。このクルマの実力を試すステージに選ばれたのは、スペインの荒れた路面と、スーパー・スポーツカーの試乗ではおなじみのスペイン南部に位置するセビリア・モンテブランコ・サーキットだ。
一般道でのテスト・ドライブでは、全長×全幅×全高=4565×1958×1187mmのスリーサイズでは取り回しに困るのではないかと案じていたが、走り出したとたん、拍子抜けするほど、あつかいやすい。フロントの見切りの良さに加えて、舵を切ると、切っただけ曲がるような素直なフィーリングに好感が持てる。スポーティネスを重視したと聞いていただけに、荒れた路面での乗り心地の良さには驚きを隠せなかった。
足元に備える磁性流体ダンパー「SCM-Frs」は減衰力の切り替えが可能で、ほどよくいなしてくれる。公道試乗用に履いた「ミシュラン・パイロットスポーツ4 S」も、乗り味の良さに貢献。ステアリングホイールの上にあるマネッティーノを操作して、オートマチック・モードを選んでおけば、ストレスなく気持ちよく走ることができる。
サイドサポートが張り出したシートに滑り込むと、存外、しっくりと身体に馴染む。スーパー・スポーツカーの室内は窮屈かと思う人も多いだろうが、「296GTB」の室内空間は想像する以上にフロントの見晴らしが良く、室内のしつらえも快適だ。
最大の進化は、フルデジタルの液晶表示になったHMI。伝統的な計器類もいいが、海外の慣れない道を一人で走るにあたっては、ナビを全面表示できるなど、現代的な機能がありがたかった。
もちろん、ただ快適なだけではない。山道に向かって舵を切ると、もう一つの顔が垣間見れる。このクルマの最大の特徴であるドライビング・プレジャーを引き出して、存分にドライブを楽しめる。
「296GTB」は、従来の変速やスロットル応答性、トラクションコントロールなどを切り替えるマネッティーノシステムに加えて、PHVの制御を切り替える「eマネッティーノ」も搭載されている。様々な組み合わせを試したところ、筆者は、マネッティーノでは「スポーツ」、eマネッティーノを「パフォーマンス」に設定して走るのが、最もバランスよく感じられた。
高速道路での帰り道、再び、アクセルペダルをぐっと踏込む。望むだけの力が湧いて出て、必要なときに必要なだけ加速ができる。ステアリングホイールを切った分だけ、スッと素直に曲がるのも気持ちいい。純粋に運転が楽しい。そんなドライビング体験だった。