米インフレ、企業の収益も圧迫 市場ではリセッション懸念台頭

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米国の決算シーズンはまずまずの滑り出しとなっているものの、市場関係者の間では企業収益はインフレにともなうコスト高などによって圧迫されるとの警戒感が強まっている。米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に利上げを進める姿勢をみせるなか、米経済のリセッション(景気後退)入りを懸念する声も広がってきた。

「企業が直面している数々のコスト圧力を考えると、2022年決算の利益率予想は楽観的すぎるのではないか」。モルガン・スタンレーのストラテジスト、マイケル・ウィルソンは18日のリポートでそんな見方を示した。ロシアとウクライナの戦争が「エネルギーと食品の急激な値上がりを招いた。すでに高水準のインフレに苦しめられていた消費者にとって、これはほとんど税金が増えたようなものだ」とも記した。

3月の米消費者物価指数(CPI)は前年同月比8.5%上昇し、1981年以来の高さとなった。FRBは利上げを積極的に進める方針だが、投資家はそれによって米経済の成長が損なわれるのではないかと気をもんでいる。

市場ではリセッションを懸念する声も強まっている。ウィルソンも「米経済の成長は減速しており、リセッション入りするリスクが高まっている」との認識を示した。ゴールドマン・サックスのチーフエコノミスト、ヤン・ハツィウスによれば、FRBの金融政策引き締めで向こう1年にリセッション入りする確率は15%、2年以内では35%に高まるという。

モルガン・スタンレーは第1四半期の企業決算について、全体として期待はずれの結果になるおそれがあるともみている。金融情報企業リフィニティブのデータによると、S&P500種株価指数を構成する企業が最近行った業績予想見直しでは、上方修正26社に対して下方修正73社と引き下げの傾向が顕著になっている。

これまでに第1四半期の決算を発表した企業の間でも、インフレによる業績への悪影響が強まることに警戒感を示す声が多い。

生活雑貨店ベッド・バス・アンド・ビヨンドは先週の決算発表会で、「前例のないインフレをはじめとする異常なマクロ経済要因」によって事業が打撃を受けていることを認めた。食品加工会社ラムウェストンも今月行った決算発表に際し、消費者が著しいコストインフレに直面するなか、飲食店の客足や消費者需要は「当面、変動がさらに激しくなるおそれがある」と言及している。

金融情報企業ファクトセットによると、S&P500構成企業のうち、前の四半期(2021年第4四半期)の決算発表会で「インフレ」という言葉を用いた企業は356社にのぼった。これは少なくとも2010年以降では最多だという。

編集=江戸伸禎

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