経済・社会

2022.04.22 14:30

米中に挟まれた日本「軍事力」は必要か


問題は、米中に挟まれている日本である。

米国からは、政治、経済、文化のあらゆる面で大きな影響を受けている。軍事防衛への依存はとりわけ大きい。親米感情も強い。

中国へは、尖閣問題や時として湧き上がる反日運動に、日本国民の大半がうんざりしている。日中両国ともに嫌中、反日感情が強い。国交正常化50周年の今年も盛り上がらない。けれども、いまや中国なしには日本経済は成り立たないほどに、経済依存度が高い。「嫌いでも引っ越しできない隣人」といわれるゆえんだ。

こうして、わが日本は、太平洋の両側に鎮座する2大強国の狭間で右往左往する。いつまでも外交テクニックや理屈でしのげる状況ではない。米国や中国がそうであるように、自身の立場を冷静に分析したうえで、核心的利益を守るための条件と対策を打ち立てる必要がある。

日本の核心的利益は平和と経済的繁栄だ。国家が核心的利益を堅持するための条件は3つある。第一に巨大な消費市場の存在、第二に多くの先端技術と工業力、第三に強力な軍事力である。これらのひとつでも欠くと、核心的利益が危うくなる。

日本は20世紀までは、第一と第二の条件を満たしていた。世界は冷戦構造で、現在よりはある意味で単純だった。だから、日本の核心的利益は2条件だけでも何とか守れた。

しかし、いまやこの2つの条件も危うくなっている。これらを充足するように全力を挙げるべきは言うまでもない。さらに、銘記したい点は、世界は多極化、流動化、無秩序化するばかりという現実である。第三の条件について、いよいよ真剣に検討しなければならない。

「世界の常識は日本の非常識」などと嘯(うそぶ)いていられる時代ではなくなった。


川村雄介◎一般社団法人 グローカル政策研究所 代表理事。1953年、神奈川県生まれ。長崎大学経済学部教授、大和総研副理事長を経て、現職。東京大学工学部アドバイザリー・ボード、嵯峨美術大学客員教授などを兼務。

文=川村雄介

この記事は 「Forbes JAPAN No.092 2022年月4号(2022/2/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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