2023年に大麻取締法が改正される?

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話は変わりますが、世界の大麻法関連は、物凄いスピードで進んでいます。

アメリカの一部の州では大麻草の所持使用の合法化、EUにおいても一部では非犯罪化、アジアではタイでの大麻に関するルール改定、韓国では医療大麻(製剤)が合法化した、などがその一例です。

他方で、日本において性急な大麻合法化が可能だとは思えません。なぜならば一般人の殆どは「興味がほぼ無い人」だからです。そして、社会的なバイアスとして「大麻=ダメ、ゼッタイ」なのです。日本の大麻のあり方は米国やヨーロッパと異なります。

また、薬物全般について、国民のほとんどが日常で触れる機会はなく、薬物に対しては良くないものだと認識しています。医療で使われるモルヒネについても先進国の中で使用率が極端に少なく、医療でさえも薬物を使うことは忌避されているような状況です。対して、アメリカはオピオイド(麻薬性鎮痛薬)が主流です。また麻薬については覚せい剤をはじめ大麻についても戦後において日本に比べれば、かなり日常的に存在するものでした。これは善し悪しではなく現実です。大麻草喫煙が本当に悪いのかどうかではなく、社会としてそれを受け入れないという姿勢を取り続けてきたのが日本という国です。

昨今、日本でも大麻のあり方について有識者会議が行われたことは非常に大きな意義があったと思いますし、これからも議論は大いに進めるべきだと思っております。性急にことを進めようとしても、簡単には進むものではありません。むしろ逆効果になることもしばしばです。少なくとも手綱を握っているのは我々でないことを理解したうえで行動をすることが重要だと私は考えています。

大麻推進派の方の主張に対して


ステレオタイプ的な取り上げ方で申し訳ないのですが、「推進派」の方の主張でよく見るのが「大麻はアルコールやタバコに比べて安全というデータがあるのになぜ禁止なのか」という発言です。この発言自体には、私も同意できます。

しかし、ここには大きな問題が隠れているのです。これは、合法化に対する「一つの理由」でしかないことです。つまり、この理由以外にも多くの「肯定的な理由」と「否定的な理由」が存在しているのです。タバコは現時点で国が許可している嗜好品であることは事実です。いずれにしても、これらの嗜好品との比較で合法化するべきという主張は、いささか強引な気がします。

現在、合法であるタバコもアルコールも、非合法である大麻などの薬物に関しても、現在までの研究の結果で功罪が分かってきたのです。この功罪が分かる前に、合法としたものと比較し安全を主張したところで、大きな意味を持つとは思えないのです。比較無しに、純粋に大麻に関して有益であることを主張していく方がスマートだと私は考えています。実際、モルヒネやコンサータなど毒物薬物とされているものも医療で使われるようになり、適切な医師による治療の一環であれば使用することもできます。現在、大麻製剤(成分)については合法化の方向性で議論が進んでおります。ここから更に、議論を先に進めるためには、議論の熟成と国民の理解が不可欠となっていくと思います。
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文=柴田耕佑

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