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2022.04.19

JPモルガンが「グーグル風」新社屋発表 環境に配慮、ヨガ部屋も用意

JPモルガン・チェースの新しいグローバル本社ビル予想図(Photo: Business Wire)

米金融大手JPモルガン・チェースが、まるで米IT大手グーグルの社屋のような最先端のグローバル本社ビルをニューヨークのパーク街270番地に建設する。社員が出社したくなるようなオフィスにするべく、ヨガやサイクリングのための部屋、瞑想(めいそう)スペース、屋外エリア、豪華仕様の食堂といった福利厚生や設備を提供する。

環境への配慮も売りだ。ニューヨーク市最大の完全電化ビルとして、温室効果ガスの排出量を実質ゼロとするほか、屋内の空気浄化システムも導入し、サステナビリティ(持続可能性)や社員の健康を確保する。

設計はフォスター・アンド・パートナーズが担当。高さ約423メートルのビルに広がる約23万平方メートルのスペースは、将来の働き方の変化にも容易に対応できる仕様だ。快適な新社屋は従業員にとっての魅力が高まり、新規採用や雇用の維持にも貢献するだろう。

ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が新型コロナウイルスの流行中、行員やトレーダー、運用担当者やコンプライアンス担当者がオフィス勤務を再開することにこだわっていた理由も、今なら納得がいく。莫大な費用をかけ超高層ビルを建てても、誰も出勤してこなかったら元も子もない。行員らがハイブリッド型や完全リモートの勤務形態を希望しても、マンハッタンの新社屋建設に巨額をつぎ込んでいることから、そうした勤務を認める経済的なメリットはない。

新社屋には約1万4000人が勤務し、JPモルガンは引き続き、ニューヨーク市で最大級の雇用主となる。このプロジェクトに感化され、他企業も自社の社屋改善を試みるかもしれない。過去2年間で、マイクロソフト、アマゾン、グーグル、メタといったIT大手が、新社屋を建設したり、スペースをリースしたりしている。JPモルガンの新社屋建設は、コロナで疲弊したニューヨーク市のビジネスと社会活動の両面での復興の一助となるかもしれない。

エリック・アダムズ市長は以前、金融大手を含む各企業の幹部たちに対し、オフィス勤務の再開を呼び掛けていた。市長が懸念していたことは、ニュージャージー州やコネチカット州、ロングアイランド、ウェストチェスターといった郊外に住む人々がニューヨークに通勤しなくなることで、同市がゴーストタウンと化し、治安の悪化や違法薬物のまん延につながる恐れだ。

通勤者が戻らねば、家族経営のレストランや商店、バー、ネイルサロン、ジムなどの経済的弱者は大きな打撃を受ける。世界4大監査法人(ビッグ4)のひとつであるデロイトは、JPモルガンの新社屋建設による経済効果をニューヨーク市で26億ドル(約3300億円)、ニューヨーク州全体では36億ドル(約4600億円)と試算している。

編集=遠藤宗生

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