──現在の原油価格の高騰は一時的なものでしょうか。それとももっと永続的な変化の現れなのでしょうか。その場合、グローバル経済にはどのような影響があるのでしょうか。
原油価格の変動は長期にわたると私は予想しています。価格水準や変化の方向性を予測することは非常に困難です。
いずれにせよ、原油価格は100ドル以上の水準で推移する可能性があると思いますが、長くは続かないでしょう。ましてや永遠に続くとは考えられません。なぜなら、中期的には供給が需要増に追いつくはずであり、その間にうまくいけば、地政学的な緊張が緩和されるからです。長い目で見れば、どこかの時点で需要が頭打ちになり、減少に転じるのではないでしょうか。
ですから、原油価格が今以上に上がることはないでしょう。不確実性が最も高いのは、いつそれが起きるかという点です。専門家の間でも意見が大きく分かれており、ピークが数年後という人もいれば、数十年後という人もいます。
そうは言っても、価格が一時的に高騰し、今よりも高い150~200ドル程度の水準まで上昇するリスクはあると思います。エネルギー転換は、需要側の変化と供給側の調整を協調して行っていかなければなりません。そうでなければ、一時的な原油価格高騰を招く可能性が非常に高くなります。需要を調整せずに供給抑制を強行すると構造的な不均衡が生じ、原油生産の投資サイクルが非常に長いことを考えれば、対応は非常に難しくなります。
エネルギー転換が進む中、原油生産に新たな投資をすべきではないという圧力が高まっていますが、石油の供給も必要であることを理解することが必要です。エネルギー転換に関しては、今から2050年までの期間でこのバランスをとっていかなければならなりません。
この時、機会が損なわれないようにするためには、消費者、個人、産業それぞれの需要が共に主導する形でエネルギー転換を行っていくことが大切です。これは「ビッグオイル(大手石油会社)」のみならず、私たち一人ひとりの課題でもあります。うまくいかなければ、私たちの将来は不安定になるリスクがかなり高くなるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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