1. 好調な経済成長が石油需要を牽引
2年前、新型コロナウイルス感染拡大が始まった頃は、経済活動も石油の需要も落ち込んでいました。石油生産者は生産量を調整していましたが、石油埋蔵量や資本の調整以外にできることには限度があり、備蓄量も限られています。さらに、経済危機がどの程度深刻化し、いつまで続くのかという不安もありました。
これらの複合的な要因によって、原油価格は過去数十年間で最も低い水準まで下落し、一時はマイナス40ドルまで急落しました。困難な時期は数カ月間続きましたが、その後経済は驚異的な回復を見せ、原油と石油製品の需要は拡大しました。
現時点での石油需要はパンデミック以前の水準に戻ったか、それを以上と推定されており、過去最高になっています。ここで注意しなければならないのが、二酸化炭素排出量も同じように増加しているという事実です。
パンデミックが始まった頃は、二酸化炭素排出量も減少するのではという期待も大きかったように記憶していますし、実際、二酸化炭素排出量は2020年に数%減少しました。しかし、減少は長くは続かず、現在では二酸化炭素排出量はパンデミック前よりも増加していると推定されています。
2. 長期投資サイクルと慎重な資本配分による原油供給の制限
石油の供給は需要増に対応しきれていません。石油輸出国機構(OPEC)は原油生産を徐々に拡大していますが、余剰生産能力も限られている上、市場が再び供給過剰にならないようにするため、慎重に対応しているとみられます。
余剰生産能力以外の要因としては、原油生産は投資サイクルが非常に長いということがあります。資源が確認された時点から最初の生産までに最大10年かかることもあるのです。一部の非在来型資源ではもっと早く生産できることもありますが、規模は限定的です。
さらに、生産者は例外なく資本配分に慎重です。第一に、原油価格がマイナス40ドルにまで下落した時に市場が供給過剰になり、これが教訓となっているのです。第二に、こちらの方が重要だと思われますが、新規油田は開発しないこと、生産を維持・拡大するための投資は抑制・減少させること、そしてその資金をグリーン投資に振り向けること、という強い圧力が業界にかかっていることです。
3. 地政学的な緊張
ロシア・ウクライナ間の地政学的緊張や中東の不安定な情勢によって、原油市場の緊張感はさらに高まっています。