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2022.05.03 08:30

10年で1兆円超の取引仲介 米美容予約サイト「スタイルシート」CEOの道のり


マクロスキーは美容業界の人々に、単なる予約システム以上のものを提供したかった。利用者の事業を飛躍させるシステムをつくりたかったのだ。

スタイルシートは、美容師の事業運営を分析し、料金調整などを通じて売り上げを最大化するソリューションを提供している。同社のサービスを利用することで、1年間で売上高が倍増する事業主は多い。

「他社との競合に注力する人と、コミュニティーに注力する人がいるが、私は後者。私たちと、この分野の他のテック企業には違いがある。他社は全て『機能型』企業で、『多くの機能を有料で提供します。使い方は自分で学んでね』というもの」

スタイルシートはそうではなく、サイト上で生じる売り上げの一部を徴収しつつも、「フリーミアム」モデルを採用して一連の機能を無償提供している。「このやり方ははるかに難しいが、コミュニティーにとっては良い」という。

シードラウンドの資金調達は100万ドル(約1億円)に満たなかった。しかし立ち上げ後のサービスが美容業界や顧客から大きな反響を得たため、2014年にはシリーズAで約1020万ドル(約13億円)、2015年のシリーズBでは約2500万ドル(約31億円)を調達した。

しかし、その道のりは決して楽ではなかった。「最初のころに直面した大きな障壁の多くは、精神的なものだった」とマクロスキーは語る。「名門校の学歴はなく、工学を勉強したわけでもなかったので、自分に必要な頭脳があるとは思えなかった。また自分以外の女性起業家も知らなかった。全くいなかったわけではないが、非常に少なかった」

しかし女性起業家の少なさからマクロスキーが学んだのは、実業界での成功から締め出されていると感じる人々を支援することの重要性だった。スタイルシートを利用する美容関係者の約80%は女性で、その55%は有色人種だ。

「この業界では、金銭面の考え方や管理、サービス料金の設定方法、獲得する顧客の質の高さや低さ、マージンについての考え方などに関し、教育を受けていない人が多い。この格差を埋めたいと真に願っている」

スタイルシートは、美容関係者の多くにとって、これまで経験した中で最も厳しい年だった2020年、約1500万ドル(約18億円)の売り上げを事業主にもたらした。

「これを誇りに思っているが、まだ私たちの仕事は始まったばかり」とマクロスキーは語った。

編集=遠藤宗生

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