ビジネス

2022.05.03

10年で1兆円超の取引仲介 米美容予約サイト「スタイルシート」CEOの道のり

スタイルシートCEOのメロディ・マクロスキー(c)StyleSeat

美容師予約サービスを提供する米企業スタイルシート(StyleSeat)のメロディ・マクロスキー最高経営責任者(CEO)が、シリコンバレーの投資家に対し、レストラン予約アプリ「オープンテーブル(OpenTable)」のビューティー分野版をつくるアイデアを売り込んだとき、反応はあまりよくなかった。

売り手と買い手を直接つなげる「マーケットプレイス」方式のサービスは当時、現在ほどの市場規模がなかった。特に美容業界は市場規模が5000億ドル(約630兆円)に上るにもかかわらず「取るに足らない」業界とみなされ、開拓対象にはなっていなかった。

しかしマクロスキーは、そうした見方が間違っていることを証明した。スタイルシートはこれまでに、米国で累計1億5500万件以上の予約を仲介し、小規模事業主に計約106億ドル(約1兆3000億円)以上の収入をもたらした。

「当時は、この会社が何なのか、どんな存在になるのかを誰も知らなかった」とマクロスキー。「私たちはそれを常に証明していた。私は営業と採用、売り込み、事業構築をすべて同時に行っていた」

同社はサービス立ち上げ前からアシュトン・カッチャーやソフィア・ブッシュといったエンジェル投資家を集めており、それだけ聞くと一夜にして成功を収めたように思えるかもしれない。だが、黎明期は苦労続きだった。1年半にわたり起業の準備やブランド構築に取り組み、ようやく外部から関心が集まり始めた。

「私は、シリコンバレーが小規模事業主の成功に興味がなかったことにいら立ち、それを変えたかった」

「とてもつらかった。学生時代のクレジットカード負債が多くあり、預金も少なかったため、人生と事業の全てをクレジットカードに頼り、1年間ピザを食べた」

マクロスキーは「まねはしないように」と冗談を飛ばし笑った。

起業から2年近くがたち、エンジェル投資家からシードラウンドで少額を調達すると、2011年にサービスを立ち上げた。

「私は、自分には絶対にない独創力や才能を持つサロンのオーナーやスタイリストにいつも感銘を受けていた。それでも、こうした人々を経済的にもっと成功させる製品をつくることができると確信していた」

そして彼女は、それをやってのけた。
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編集=遠藤宗生

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