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2022.05.01 17:00

黒人主導のVCで初の「運用資産10億ドル」を達成した投資家

TJ Nahigian(左)とアデイェミ・アジャオ(右)(c)Base10

昨年末、投資家のアデイェミ・アジャオ(Adeyemi Ajao)は、92歳になる父親の世話をするため、故郷のスペインに帰国した。自身が経営するVC(ベンチャーキャピタル)の「Base10 Partners」の活動について父から尋ねられた彼は、「アフリカのフィンテック企業に投資している」と話した。

すると、ナイジェリア出身の父親は「米国に渡ったお前が、わざわざアフリカで投資をするなんてどうかしている」と話したという。

サンフランシスコ本拠のBase10は4月5日、4億6000万ドル(約569億円)の3号ファンドを組成し、黒人が経営するVCとしては初めて運用資産が10億ドルを突破したと発表した。

2018年に設立された同社は、アジャオとTJ Nahigianの2人のマネージング・パートナーがデータ分析に基づく投資で、主に食品や小売などの業界で自動化技術を提供する企業を支援している。

Base10がこれまでに出資した64社の大半は、彼らが独自のソフトウェアを使って新興のメガトレンドと特定した分野の企業だ。同社は、最初の2つのファンドで、フードテックに重点的に投資し、レストラン向けマーケティングを手掛ける「PopMenu」(現在の評価額は5億2500万ドル)のシードラウンドを主導し、クラウドキッチン企業「All Day Kitchens」(評価額3億7500万ドル)のインキュベーションを行った。

同社の調査によると、現状のフードテック分野は飽和状態で、新たに組成した3号ファンドでは、アフリカのフィンテック企業への投資を予定している。

Base10の投資先企業の60%は、創業者が人種的マイノリティの企業だ。同社は、黒人がテクノロジーにアクセスし、起業しやすくする取り組みを行っており、利益の1%を、ダイバーシティを推進する活動に寄付している。また、昨年は2億5000万ドル規模の最初のグロースステージファンドの立ち上げの一環として、HBCU(歴史的黒人大学)への寄付を宣言した。

VC業界から「本物の変化」を起こす


アジャオは、このような活動が直ちに変化に結びつかないこともあると理解しているが、それでも黒人の投資家や黒人主導のファンドが着実に増えていることに勇気づけられている。

「我々に続いて、他の黒人が経営するファンドが運用資産10億ドルを突破する日は近いだろう」とアジャオは言う。彼は、その候補として645 VenturesやHarlem Capital、Kindred Ventures、Plexo Capital、Precursor Venturesを挙げた。

Base10の運用資産が10億ドルを突破した今、アジャオは、人種マイノリティのファンドマネージャーを紹介してほしいと頼まれる機会が増えたという。「今から数年前には、想像もできなかったような状況だ」と彼は話す。

しかし、VC業界が2年前に起きたジョージ・フロイドの殺人事件をきっかけに、人種差別撤廃に向けて多くの取組み始めたことを考えると、これはまだ1つのステップに過ぎないと彼は考えている。「本物の変化を起こすために、我々は前進し続けなければならない」と、アジャオは語った。

編集=上田裕資

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