森岡 弘(以下、森岡):この連載ではここ数年服装のカジュアル化を取り上げてきましたが、今回はカジュアルなデザインでも上下揃いの素材。こうしたセットアップものって、ずいぶんと増えました。ゴルフウェアでもかなり増えているので、これはひとつのトレンドと言えるかもしれませんね。
小暮昌弘(以下、小暮):確かにそうですね。カジュアルなデザインでも品よく見えますからね。
森岡:上下つながって見えるので、ちゃんと見えるのだと思います。今回はミラノの巨匠「ジョルジオアルマーニ」のセットアップです。スーツに使われるようなエレガントな素材で仕立てられています。
小暮:アルマーニが大好きなネイビーのストライプ入りの素材。ストライプの幅が広いところがカジュアルさを演出します。トップスは、トラッカージャケットと呼ばれる今シーズン、「ジョルジオ アルマーニ」のコレクションで多く見られるデザインですね。一方、ボトムス=パンツはプリーツ入りのモデルで、裾に向かってやや細くなっています。これならスニーカーでも革靴でも似合いそう。
森岡:トップスにわざとブルゾンなどのカジュアルアイテムを合わせる“遊びのある”セットアップは、昔から彼はよくやっていた覚えがあります。
小暮:2022年春夏のコレクションは、「原点への回帰─始まりの地に立ち戻って─」というテーマでつくられていますからね、森岡さんがそう感じるのももっともです。
森岡:確か、コレクションの会場になったのは彼が最初にアトリエを構えたボルゴヌオーヴォ21番地だったのでは。ネイビーのスーツに始まって、草木柄モチーフのニットなどが登場しました。そういえば、ジレに組み合わされたバミューダ丈のショーツもたくさんありました。あれもアルマーニらしいアイテムと言えます。
小暮:1980年代から「モードの帝王」あるいは「マエストロ・ディ・マエストロ(巨匠中の巨匠)」と呼ばれ、ミラノファッション、いや世界のファッションを長らくけん引してきた彼ですからね。90年代ブームもあってか、最近、多くのハイブランドでストリート的な要素が強まっていますが、さすが巨匠は違う。王道を堂々と行く。