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2022.04.22 07:30

河川清掃もリモートで。NPOが開発したiPhone向け「ゴミ拾いアプリ」

Getty Images

荒川は東京・埼玉を流れる代表的な河川のひとつだ。遠目にはきれいに見えるが、実は河川敷にはペットボトルや飲料缶、ポリ袋など様々な種類のごみが浮かんでいたり、川底に堆積している。

NPO法人の荒川クリーンエイドフォーラムは発足から20年以上、荒川河川上流の秩父市から東京湾の葛西海浜公園東なぎさまで広範に渡り、川の自然を守るための清掃活動に力を注いできた。その活動には自治体、企業、学校など様々な団体が賛同。ピーク時には年間に1万3000人を超える有志が集い、荒川沿い150会場以上でごみ拾いを行ってきた。


荒川上下中の様々な河川敷でごみ拾いの活動や水質調査などを行うNPO法人「荒川クリーンエイド」

ところが2020年からコロナ禍の影響を受けて、活動参加者の人数が年間1600人の規模にまでに減り、集団による現場活動が持続できなくなった。

「それでもなお、できる限り多くの人々に河川・海洋ごみが社会課題であることを知ってほしいと考えていたところ、デザイナーのかきぬまつとむ氏から企画提案を受けて、スマホアプリを開発することにしました」と、荒川クリーンエイドフォーラム理事/事務局長の今村和志氏は「FLOAT - River & ZEN & Chill」(以下:FLOAT)アプリが誕生した経緯を説明する。


App Storeから無料でダウンロードできるiPhone/iPad対応のアプリ「FLOAT - River & ZEN & Chill」

河川ごみ問題について遊びながら学べるアプリ


iPhone/iPadに対応する「FLOAT」は、河川ごみ問題について「遊びながら学べる」アプリだ。コンテンツは大きな3つの要素により構成されている。

まずは、ゲームだ。川に浮遊するごみをカゴに入れて回収するというシンプルなゲームだが、複数のごみを連続して回収する“コンボ”が決まると、各河川に生息する魚の姿が見られるボーナス的な仕掛けもあり、意外にのめり込める。


左側が河川のごみ拾いを疑似体験できるゲーム。右の「河川ごみのQ&A」は現在10件のQ&Aを収録している

2つめの要素は、アプリによるバーチャルな体験を現実の河川ごみ清掃活動につなげる仕組み。ユーザーがアプリで動画広告を視聴したり、アプリ内課金によりフォーラムの活動資金を寄付できるようになっている。

「寄付を受けた荒川クリーンエイドフォーラムは、次回、荒川の清掃活動の際に支援に相当する量のごみを収集します。なお、清掃活動に集まったごみは国土交通省、および河川敷を管理する自治体に無償で引き取ってもらいます」(今村氏)


アプリ内課金、または動画広告を視聴することで河川ごみの収集活動をサポートできる

デザイナーのかきぬま氏は、「Appを通して現実世界に貢献できる仕組みを作りたかった」と、アプリにユニークな機能を設けた意図を説明する。

「社会実験的な意味も含めて搭載した機能なので、まだこれから周知を拡大する段階。今後アプリの認知が広がれば、荒川クリーンエイドフォーラムの現場活動に再び多くの参加者を呼び込めるのではないかと期待しています」(かきぬま氏)


アプリの企画開発を手がけた、デザイナーのかきぬまつとむ氏

3つめの要素は「河川ごみのQ&A」だ。かきぬま氏が「勉強感を漂わせないようにハードルを下げた」というQ&Aは、全10問の平易な内容としている。
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文=山本敦

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