狙われる商品は主に、大量に盗み出し、容易にオンラインで転売できるものだという。なかには数百万ドルを稼いでいる犯行グループもあるとされている。
米小売業界団体の小売業リーダーズ協会(RILA)などによると、小売業者の70%近くが、「昨年は組織的な犯罪が増加した」と明らかにしており、盗難による損失額は、約690億ドル(約8兆6500億円)にのぼっているという。
カリフォルニア州サンディエゴに本社を置くインダイム(Indyme)のジョー・ブーダーノCEOは、「誰もがあらゆるものを、鍵をかけてしまっておこうとしている。強迫観念にかられているのだ」と話す。
ウォルグリーンをはじめ、大手小売りチェーン各社に小売業向けソリューションを提供する同社の商品陳列ケースは今年、売上高が40%の伸びを記録しているという。施錠できるこのケースには「ヘルプボタン」が付けられており、顧客がそれを押すと、従業員がスピーカーで呼び出される仕組みになっている。
「スマートロック」を販売するインビュー(InVue)の最高プロダクト・マーケティング責任者、クリス・ギブソンは、小売業者は「いま、何かしなければいけないと考えている」と指摘する。商品ケースを施錠する店舗が増えているのは、そのためだという。
スマートロックの売上高は昨年、前年比で31%増加。今年も年初から現在までで、86%急増している。インビューの顧客には、ウォルマートやロウズ、ベストバイなどの大手チェーンが含まれる。
一方、商品の陳列棚に設置するプラスチック製のケースを販売するRTCは現在、生産が追い付かないほど売れ行きが好調だ。同社によると、このケースは片手では開けることができないため、複数の商品を一度に取ることができず、万引きの防止につながる。
さらに、窃盗が疑われた場合にはアラームが鳴るようになっている。施錠はできるタイプとそうでないものがあるが、小売業者の大半は、ロック付きを選ぶという。