一方、ロシアにとって重要な貿易相手の一つである欧州連合(EU)は、ロシアに対する監視を強めているにもかかわらず、同国からのガスや原油、石炭の輸入を断つのに時間がかかっている。EUと米国の輸入データからは、ロシアへのエネルギーの依存度に実際大きな差があることが示されている。
ロシアの輸出は原材料に大きな重点を置いている。EUと米国がロシアから2021年に輸入した物品の中では、鉱物燃料が絶対多数を占めていた。その一方、EUと米国のロシアからの輸入品の中で、鉄や鋼鉄、木材、貴重な宝石や貴金属など他の原材料が占める割合ははるかに少なかった。
米国はロシアのウクライナ侵攻前、同国から多くの鉱油を輸入していて、ロシアからのエネルギー輸入に費やす額は1日に約5000万ドル(約63億円)に上っていた。一方EUでは、この金額は毎日3億ドル(約380億円)に近いものだった。これは、欧州委員会(EC)、国連商品貿易統計データベース(UN Comtrade)、米国勢調査局の数字に基づくもので、今年4月7日にユーロから変換された。
米国では昨年、財の貿易全体においてロシアからの輸入品が占めていた割合はわずか0.7%だったが、EUはそれよりはるかに高い3.6%だった。しかし、EUと米国はどちらも、ロシアにとって非常に重要な資金調達経路であるエネルギー関連の輸入を止める方向に動こうとしている。
EU内では、こうした状況に備えていたとされる一握りの国のみが、過去1カ月半の間にロシアからのエネルギー輸入を断つことができた。バルト海沿岸諸国のエストニア、リトアニア、ラトビアは先週、ロシアからのエネルギー輸入を全て停止すると発表した。
米議会も先週、ロシア産の原油やガス、石炭の輸入を禁止する法案をほぼ全会一致で可決した。これは、米大統領官邸から既に出ていた同様の指令に続くものだ。自国でも多くの化石燃料を生産する米国がこうした禁止令に従いやすいのは確かだ。
エネルギー依存の深い根
一方、EUが先週ロシアからの輸入禁止令を出したのは石炭のみだった。米紙ニューヨーク・タイムズによると、石炭はEUにとって最も置き換えやすいもので、禁止令が完全に効力を発するまでには4カ月かかることが見込まれている。