英紙フィナンシャル・タイムズによると、メタはメタバース計画の一環として、利用者が使用可能なデジタル通貨の開発を検討しているという。この通貨は、ザッカーバーグのニックネームをもじって「ザック・バック(ザックのカネ)」とやゆされている。
これはメタバース計画と同じく、メタの収支改善につながる新たな収入源を確保するための方針転換である可能性がある。メタは2月、自社の中核事業がさまざまな逆風にさらされたことで株価が下落し、時価総額は2200億ドル(約28兆円)余り下がった。
メタ・フィナンシャル・テクノロジーズが開発する「ザック・バック」は、メタの管理するアプリ内トークンとして提供される見通しだ。以前から各種ゲームで利用されてきた各種トークンと似ており、メタが運営する各SNS上で売買したり、物やサービスの購入に使ったりできる。
報道によると、メタは「ソーシャル・トークン」を開発し、メタ傘下のSNSに対する貢献度に応じてユーザーに配布する可能性がある。インスタグラム上のインフルエンサーに「クリエイター・コイン」を配布して、積極的な投稿を促し、ティックトックに流出し続けるユーザーを取り戻す計画もあるとされる。また、さまざまな金融サービスを導入する可能性もある。例えば小規模事業主向けのローンや、取引可能なNFT(非代替性トークン)などだ。
同社がデジタル資産に進出するのは初めてではない。フェイスブックは2009年、時代に先駆けて、「ファームビル」などのオンラインゲーム上での決済に利用できる「フェイスブック・クレジット」を発行した。
つい最近も、仮想通貨「リブラ」の構想を発表。だがこれに対して懐疑的な見方や不信感が即座に広がり、規制当局からも問題視されてしまった。結局、リブラのプロジェクトに関わった幹部や従業員の多くは辞職。リブラは2020年後半に「ディエム」と改名して再スタートしたものの、支持を得られず、今年初めに開発は打ち切られた。
世間の風潮に合わせてザッカーバーグをばかにするのは簡単だが、彼は無視すべき人物ではない。個人的な好き嫌いはともかく、彼は自身のビジネス手腕を証明してきた。競合他社のサービスをコピーしたり、まるごと買収したりすることもいとわない人物だ。
ザッカーバーグにはまだ、自由に使える資金が大量に残っており、大きな利益を生み出し続けるSNSも複数運営している。新たなデジタル通貨が計画通り発行されるか、あるいはまた失敗に終わるかに注目したい。