ビジネス

2022.04.15

脱東京一極集中 エンジェル投資で地方創生を目指す「SEVEN」の正体

左から、山本敏行と戸村光(撮影=林孝典)


山本:数分話を聞いてこれは面白いと思い、ピッチに出てもらうとお金が集まりました。すごいのは、ヴィッセル神戸のイニエスタ選手から発注を受け、神戸の自宅の屋上に芝を敷いたという話。

戸村:そこでイニエスタが子どもと遊ぶ様子がインスタグラムに上がり、新規のお客さんを呼び込んでいます。

山本敏行と戸村光

地元の起業家を地元で支援する「地産地消」


──セブンが目指す姿は。

戸村:エンジェル投資が存在しなかったところにエンジェル投資家を増やす、ベンチャーマネーがない環境にそれを生み出すことですね。

現に、日本全国にアクセラレーター(スタートアップ支援を行う組織)や、起業家を支援するコワーキングスペースはありますが、投資する枠組みを持っていません。そのため、起業家たちは資金や成長の機会を求めて東京に行ってしまう。

セブンが強みとして評価されているのは、これまで東京に一極集中していた資金が分散し、地方のどこにいても調達できる点です。

僕たちと連携することで地元で資金調達ができるので、現地のアクセラレーターと手を組みながら企業を伸ばせる。地方創生につながるわけです。

実際に、静岡県三島市のアクセラレーター企業との連携がきまり、第二弾として京都府でもスタートします。これを全国に広げていきたい。

山本:地元の若者や起業家を、地元の富裕層や組織が支援できるような、地産地消をやっていきたいですね。そこで事業が育てば、全国へと旅立っていけばいいわけです。

戸村:もちろんエンジェル投資は、VCが資金を出すフェーズの企業と比べ、成功確率が高くありません。そのため投資家には、「社会の発展に貢献するつもりで支援してほしい」と伝えています。

ただ、セブンには、エンジェル投資家である91人の経営者やスタートアップ関係者がいるので、起業家も困った時にはあらゆる業界の方に相談ができる。これはセブンの優位性の一つです。月に2回は、セブンで支援をする起業家やエンジェル投資家向けに、オンラインで勉強合宿や報告会を開催したりもします。

山本:ときには、投資先の起業家の報告や連絡が十分でなく、「大丈夫?」と心配になることもあります。投資家になってもらう人には、こういう事態が想定されますと伝えたり、僕たちの共著「投資家と起業家(クロスメディア・パブリッシング)」をテキストとして渡し、エンジェル投資について学んでもらっています。

最近では、本を読んできてくれたり、我々のコンセプトを理解したうえで投資家に応募してくる人も増えてきています。

現時点では日本は27都道府県、海外はアメリカ、中国、台湾、シンガポールにエンジェル投資家がいますが、これを日本は47都道府県に、海外は10カ国以上に広げ、全国の起業家がいつでもどこでも投資が受けられる、そんな土台を作っていきます。


エンジェル投資に踏み出せなかった人たちにとって、山本と戸村のフィルターを通して参加できることは、そのハードルを一気に下げるだろう。セブンを起点にエンジェル投資がGDPを押し上げる、そんな世界が日本にもやってくるかもしれない。

文=露原直人 撮影=林孝典

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