ビジネス

2022.04.15

脱東京一極集中 エンジェル投資で地方創生を目指す「SEVEN」の正体

左から、山本敏行と戸村光(撮影=林孝典)

エンジェル投資と聞いてどのような印象を抱くだろうか。上場に成功した経営者など限られた富裕層がやるもの、あるいは少額で投資できる儲け話、といった見方を持つ人もいるかもしれない。

本来は、創業前後のスタートアップに資金を提供する「天使のような存在」だ。エンジェル投資発祥の地であるアメリカでは、年間投資額が約2.5兆円に上り(米ニューハンプシャー大学のベンチャーリサーチセンター推計)、GDPを20%押し上げる要因になっているという。

対する日本は数百億円規模と、大きな差がある。

ただ、本田圭佑氏が2016年にエンジェル投資のファンドを設立したり、2021年12月には「FUNDINNO」が個人投資家が未上場スタートアップ企業の株を売買できる「ファンディーノマーケット」をスタートさせるなど、機運の高まりも見え始めている。

そうしたなか、投資ファンドでもマーケットでもない形態で、日本のエンジェル投資を活発化させようとしているのが「SEVEN(セブン)」だ。2020年8月にChatwork(チャットワーク)創業者である山本敏行と、企業や投資家の評価サービスを運営する「hackjpn」のCEOで投資家としても活動する戸村光が創設した。

セブンは支援を受けたい起業家を募り、二人が審査。条件をクリアした起業家のピッチを実施し、投資家と結びつけるプラットフォームだ。

投資家は、日本全国の経営者またはスタートアップ関係者に限られており、資金支援や事業を進める上でのアドバイスなどを行う。一連の流れはすべてオンラインで完結する。

立ち上げから約1年半で、91人の投資家を集め、34社へ投資。生み出した企業価値の総額は63億円にのぼる。

山本と戸村はこのプラットフォームによって何を目指すのか。


アメリカで主流になる「シンジケートファンド」


山本:戸村くんとの出会いはおよそ10年前、僕がシリコンバレーでチャットワークのCEOをやっていた時にさかのぼります。

僕が日本の大学で講演した時、僕の母校である大阪桐蔭高校に通う高校生だった彼がいたんです。大阪桐蔭って、勉強かスポーツかに集中する学校ですが、戸村くんは「全国の経営者や政治家に会って回っています」と言っていた。面白い子だと思い、フェイスブックで繋がりました。

山本敏行と戸村光

高校卒業後にシリコンバレーへやってきたので、「チャットワークでインターンをやらない?」と誘い、オフィスに住み込んで働いてもらうことになりました。

そして2年前に再会した時、僕の周りには全国の経営者が、彼にはスタートアップの繋がりがたくさんあったので、「何かビジネスができるかもね」という話になりました。

戸村:アメリカでは、経営者が仲間内でファンドを作って出資をする「シンジケートファンド」が主流になっています。あるスタートアップに出資したい人を集め、投資先1社ごとにファンドを作り運営していくものです。

例えばZoomなど、アメリカのユニコーンのほとんどがシンジケートファンドから出資を受けて立ち上がった企業で、日本にもこうした新しいファイナンスの形がやってくるのではないかと山本さんにお話ししました。
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文=露原直人 撮影=林孝典

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