サイバー企業を生み出すイスラエル国防軍の「8200部隊」とは?

インバル・アリエリ


井関:誰もが初めは初心者なのに、日本では“未経験”のプラスの側面が正当に評価されないため、年齢を問わず、ポテンシャルある人がチャンスを掴みにくい状況です。その点、イスラエルでは「未経験ならではの価値」が評価されている点が非常に新鮮ですね。そのイスラエルも「スタートアップ国家」と呼ばれるようになって早や10数年。成熟のときを迎え、「スケールアップ国家」を目指す向きがあります。これからは、どのように進化していくのでしょうか。

アリエリ:イスラエルは「スタートアップ国家」を卒業し、「スケールアップ国家」になりつつあります。かつては、イスラエル起業家に大企業を育て、経営するのは難しいと言われたものです。しかし、それが誤りであったことがわかりました。起業家と経営者を両立できることが証明されています。

とはいえ、イスラエルのスタートアップ・エコシステムは変わりなく、今後も成長を続けることでしょう。むしろ、世界のほうが変わっていくと思います。1つ目は、テクノロジーとイノベーションが不可欠になっていくこと。2つ目は、起業家スキルと起業家思考をすべての人がもたなくてはいけない、ということ。これはスタートアップに限らず、大企業や官公庁勤めの人も該当します。現状維持ではジリ貧になっていく宿命にあるので、成長し続けるしかないのです。

結論として、イスラエルのスタートアップ・エコシステムは成長し続け、そして世界でも同時多発的にスタートアップ・エコシステムが生まれてくるのではないでしょうか。当然、イスラエルのスタートアップにとって競争は激しくなるでしょう。それでも、各国・各都市のハブ同士でつながりや協業関係が生まれてくるはずです。それは、世界全体にとっては素晴らしいことなのではないでしょうか。

<第2回、「8200部隊を“解放”した男が創る『サイバー・エコシステム』」へ続く>



インバル・アリエリ◎起業家・投資家。コンサルティング企業「Synthesis(シンセシス)」の共同CEO。イスラエル国防軍(IDF)の諜報部隊「8200部隊」に所属後、同部隊の教官を経て現職。著書に、『起業家精神のルーツ CHUTZPAH(フツパ)イスラエル流“やり抜く力”の源を探る』(邦訳:前田恵理、CCCメディアハウス刊)。テルアビブ大学MBA(経営学修士)。夫と3人の息子とテルアビブ在住。

文 = 井関庸介

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