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2022.04.18 16:00

スプツニ子!が語る「LEXUS DESIGN AWARD」社会課題を解決する、リアリティを伴うデザイン

2022年で10回目の実施となる「LEXUS DESIGN AWARD」は、LEXUSが2013年にスタートした国際デザインコンペティション。現在、6つの入賞作品を発表し、グランプリの選出にフェーズを移している。

世界66カ国から過去最多となる2079作品が集まった「LEXUS DESIGN AWARD 2021」で、4人のメンターのひとりとして6組のファイナリストと対話を重ねたスプツニ子!に、メンタリングを通じて印象に残ったことや同アワードの意義などを聞いた。


──昨年の「LEXUS DESIGN AWARD 2021」のメンタリングはどのように行われましたか?

スプツニ子!:2021年は、新型コロナの影響などもありオンラインで実施しました。大学の講評会のように、その年のファイナリスト6人の作品に対して、エンジニアリングのメンターとしてアドバイスを重ね、グランプリの最終選考まで励ましたりもしました。

──印象に残っていることは?

スプツニ子!:ファイナリストが私たちメンターのアドバイスを受けて、自分たちのデザインを柔軟に変化させていったこと。大抵の人は自分が最初に出したアイデアやデザインに固執してしまうもので、それらを変えるには勇気が必要です。

というのも、私は先日、新しいサービスをローンチしたばかりですが、事業計画書をつくってみると、当初のアイデアを俯瞰してみると別の形にしたほうがより良くなるのではと考え、そこからピボットさせて最終的な事業内容を大きく変えました。そこに、私はかなりの時間を要してしまいましたが、ファイナリストたちはみんな、とても柔軟で短期間で大きな変化を受け入れていました。

グランプリを受賞したヘンリー・グロガウ氏も、初期の作品と最終的にグランプリを獲得した作品のアウトプットが変わっています。デザインというと表層的なスタイリングと捉えられてしまう事がありますが、デザインは仕組みだったり視点だったり、あらゆる要素を包含しています。なので、メンターとファイナリストのディスカッションも、見た目の話ではなく課題解決という本質に立ち戻るものが多かったです。


LEXUS DESIGN AWARD2021 のグランプリ受賞作は、ヘンリー・グロガウの「Portable Solar Distiller」。陽光を活用して汚染された水や海水を蒸留し、きれいな飲料水をつくりだす。

メンタリング当初、実は、私を含むメンターたちは彼の作品に不安を覚えていましたが、当初の作品をグランプリ受賞作品へとブラッシュアップしていく過程で、彼の能力の高さを感じていました。

──不安だった点とは?

スプツニ子!:彼の作品である「Portable Solar Distiller」は、海水や汚染水を濾過して飲料水をつくりだす装置で、同時に、海水を使って発電し、照明としても使えるという提案でした。私たちは、この課題解決型のデザインに可能性を感じながらも、一方でリアリティー、つまり、それが本当に途上国の飲料水不足の解決につながるかどうかを疑問視していました。

例えば、その装置に用いる素材が高価なものであれば、製品としての価格も高価になり、実際に使える人は限られてしまいます。それでは広く普及することは望めず、当初の目的であった課題解決には至りません。グランプリを受賞した最終作品は、現地で調達可能な素材を採用するなど、より実現可能性を追求したものになっています。

ファイナリストのメンタリングをしていると、私も卒業した英国の RCA(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート)や、オランダのアイントホーフェンの卒業生が多いことに気づきました。恵まれた環境に育ってきた若いデザイナーたちが、途上国の課題のリアリティーをリサーチすることなく、解決策としてデザインを提示することには違和感があります。

──ほかの作品で印象に残っているものはありますか?

スプツニ子!:2021 年の入賞作品のひとつ、「CY-BO」は、細胞の結合をヒントにした、パッケージなどの用途に何度も再利用して使えるという新しい包材の提案です。パズルピースのように組み合わせて使うものですが、「そもそも、これを手作業でつくることは大量生産されるパッケージとして現実的ではない。それをつくり出すマシンもデザインするべき」とアドバイスしました。それを受けて、最終作品は、包材自体をつくる仕組みを備えたアイデアへと成長しました。


プロダクトデザイナー、阿部憲司の作品「CY-BO」。小さなピースを組み合わせることで、小物からインテリアまで様々な形状に変化させることができる。

メンターのひとり、世界の第一線で活躍する建築家のマリアム・カマラ氏は、西アフリカのニジェール共和国出身です。多摩美術大学で学ぶ 4 人組の Intsui Design の「Terracotta Valley Wind」は最終的に、壁面素材にテラコッタを使うことで地下鉄の駅の暑さを解消するというものでした。マリアムが活動の拠点としていたニジェール共和国ではテラコッタ素材が身近にあったので、チームに多くのアドバイスをしていました。


テラコッタ素材による気化熱を利用して、夏の地下鉄駅構内を冷却する。エネルギー商品の削減に貢献するアイデアは、水分を素早く蒸発させるテラコッタの特質と、列車がホームに入る際に発生する風という、これまで利用されていない資源に着目。

──過去のLEXUS DESIGN AWARD で興味深い作品は?

スプツニ子!:2018 年のグランプリを獲った「Testing Hypotheticals」ですね。それまでの受賞作品は、ビジュアル的にもはっきりしたものが多かったですが、TestingHypotheticals は見た目もキラキラしているわけでもなく、悪く言えばとっても地味。一般の人が見たら、「これがなぜグランプリ?」と思いかねないようなものです。しかし、そんなスペキュラティブなプロジェクトがその年のグランプリを獲得したことが、興味深いし意義深いと思っています。

スペキュラティブとは、問いかけを備え、新たな可能性を広げる問題提起型のデザインのこと。2013 年の 1 回目から 2021 年の 9 回目までの受賞作品を見ても、その年が、LEXUS DESIGN AWARD のギアが変わった大きな転換点になっていると思います。

その後、19 年には乳がん患者のためのプロダクト「Algorithmic Lace」、20 年にはオープンソースを活用した「Open Source Communities」など、グランプリ作品の社会性は高まっているように感じています。

これはデザイン界全体にも言えることですが、2017 年以降の「#MeToo」や、ブラック・ライブズ・マターのさらなる高まり、グレタ・トゥーンベリさんの環境活動などが注目を浴びるなど、この頃から社会課題に対する意識が世界的に広がりつつありました。

そのため、デザインにも、人々が抱える社会課題に向き合あう姿勢がより求められるようになってきています。だからこそ、LEXUS DESIGN AWARD の受賞作品においても、課題に向き合うリアリティーを重視する必要があると思っています。

──LEXUS DESIGN AWARD に応募することのメリットは?

スプツニ子!:多くのデザインアワードは、エントリーして賞が決まって終わりですが、LEXUS DESIGN AWARD は、受賞してからがスタート。メンターとの対話を通じて受賞作品をブラッシュアップし、ようやくグランプリ作品が決まります。

このやり方の何がいいかというと、メンタリング次第で、アイデアが飛躍する可能性があるということ。受賞すると、多くの知見を持つメンターや審査員と対話できるのが大きなメリットです。デザイナーや建築家は、課題や問題を見つけ、ジャンルを超えてパーツを組み合わせて発想することを得意としています。さまざまな分野を横断しながら、まるでブロック玩具を組み立てるようにして課題解決を実現していきます。

エンジニアやプログラマーなど、特定分野の専門家は多いですが、社会課題に向き合うには、ジャンルを超えてネットワークさせることが必要であり、こうしたデザイン的なスキルは貴重な存在です。そういう視点やスキルを持つメンターから、プロジェクトをリードするようなコメントが寄せられることが、LEXUS DESIGN AWARD の魅力です。

私が卒業したRCA の卒業制作は、学外からも高く注目されていますが、今振り返ると、指導する先生たちから受ける影響が非常に大きかった。当時のアドバイスは例えば、問いの立て方であれば、正しい問いを立てられているか、もしくは、そもそも問いを立てる価値があるのかといったこと。同じアイデアや出発点でも、インプットやアドバイス次第で、アウトプットは大きく変わります。

私も、もしああいった機会がなければ、これまでの作品も生まれなかったかもしれないし、今につながっていないかもと思えるほどです。LEXUS DESIGN AWARD でも、メンターとの対話や専攻などのステップを通じて、あの時の私と同じような体験が得られると思います。

──これからのデザインの役割は?

スプツニ子!:コロナ禍を経て、リモートで話すことが当たり前になって、海外が近くなったように思います。ミーティングも、現地に行かなくても、どこからでも行うことができます。こうした、私たちの生活が大きく変わるタイミングには、デザインする余地が多く生まれるものです。

最近、AI の研究をしている友達と話していて思ったのが、言語の壁についてです。近年の翻訳技術は数年前よりも確実に向上しており、スマートフォンがあれば精度の高い翻訳が可能です。しかし、そういった技術が、人が使うにふさわしいインターフェイスやプロダクトに落とし込まれていない。アップルがスマートフォンを広めたように、そこはデザインが求められます。

テクノロジーが生活の変化を推進すると思われていますが、肝心なのは、技術をどうデザインするか。言語の壁はすでに技術的なハードルを通過して、デザイン領域のイシューになっている。そういうことが、さまざまな領域で起きているように思います。



©️MAMI ARAI

スプツニ子!
◎アーティスト/東京藝術大学デザイン科准教授
英国ロンドン大学インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業後、英国王立芸術学院(RCA)デザイン・インタラクションズ専攻修士課程を修了。RCA在学中より、テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映させた映像インスタレーション作品を制作。最近の主な展覧会に、2021年「deTour 2021 Design Festival」(香港)、2019年「未来と芸術展」(森美術館)「CooperHewitt デザイントリエンナーレ」(クーパーヒューイット、アメリカ)、「BROKEN NATURE」(第22回ミラノトリエンナーレ,伊)、2017年「JAPANORAMA」(ポンピドゥーセンターメス、仏)2016年「第3回瀬戸内国際芸術祭」(ベネッセアートサイト直島)、「NEW SENSORIUM」(ZKMアートセンター、ドイツ)、「Collecting Future Japan – Neo Nipponica」(ビクトリア&アルバート博物館、イギリス)など。2013年よりマサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボ 助教に就任し Design Fiction Group を率いた。現在は東京藝術大学デザイン科准教授。VOGUE JAPAN ウーマンオブザイヤー2013受賞。2014年FORBES JAPAN 「未来を創る日本の女性10人」選出。2016年 第11回「ロレアル‐ユネスコ女性科学者 日本特別賞」受賞。2017年 世界経済フォーラム 「ヤンググローバルリーダーズ」、2019年TEDフェローに選出。著書に「はみだす力」。

LEXUS DESIGN AWARD
https://lexus.jp/magazine/artdesign/lexus-design-award/

Promoted by LEXUS / text by Junya Hirokawa / edit by Tsuzumi Aoyama