ウクライナとの関係が深いイタリアの産業にみられる支援のかたち

Photo by Rafa Elias / Getty Images

イタリアのヴェローナで開催され、特にイタリア産のアルコール飲料を中心に売買と宣伝を行うワイン展示会「ヴィニタリー(Vinitaly)」は、ロンドン、パリ、デュッセルドルフ、ニューヨークで開催される同様の展示会と同じく、ワインやスピリッツに関係する仕事をする人にとっては毎年欠かせないイベントになっている。

4月10日から13日まで開催される2022年のイベントとその期待については、依然として続く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が影響を与えてきた。だが、イベントをめぐる心情に影響を与えそうな第二の懸念要因もある。ウクライナの状況だ。

ウクライナに対するイタリア人の反応は、イタリアのウクライナに対する独特な地理的・商業的現実を反映している。

そうした現実の一例が、イタリアの代表的製品の生産に欠かせない製品の供給国としてのウクライナの役割だ。また、イタリアはウクライナの国境に比較的近いため、ウクライナは、イタリアの医療や農業など、各種業界における労働力の頼れる供給源にもなっている。

ロシアの侵攻を見た多くのイタリア人は、まさにウクライナに住むリアルな人々の顔を思い浮かべる。つまり、ウクライナの状況がイタリア人の意見に及ぼす影響は、社会政治的なものにとどまらず、きわめて個人的なものでもあるということだ。

ワイングラスというレンズを通して見ると、今回の広範囲に及ぶ危機についての独自の視点を得ることができる。

難民の到来


イタリアでは、ウクライナ人の存在は目新しいものではない。ウクライナや、近隣のポーランド、ルーマニアといった国から来る労働者は、とりわけ医療や農業といった業界ではおなじみの光景だ。

だが、戦争から生まれたウクライナ難民の存在は、今までとは異なる背景を持つ。

過去にヴィニタリーを訪れたことがあるなら、たいていの人は、乗換駅のヴェローナ・ポルタ・ヌオーヴァ駅の名前を知っているだろう。「ヴェローナ・オッジ」紙の報道によれば、この駅は現在、難民の流れを管理するための「緩衝地点」になっているという。ヴェネト地方は、4万〜5万人の難民を迎え入れる準備をしており、3月15日現在で、すでに4000人が到着している。

イタリアの輸出市場への影響


なかでも、ヴェネト地方にある「ボッテガ・スパ(Bottega Spa)」のサンドロ・ボッテガという生産者は、50人のウクライナ難民を受け入れている、と「コリエレ・デル・ヴェネト」紙は伝えている。この会社は、ロシアとウクライナを含む、世界140カ国以上に輸出している。今回の危機に先立つ2014年にロシアがクリミア半島に侵攻したときには、ボッテガは取引高でおよそ50万ユーロを失った。

国全体で見ると、イタリアはロシア向けワインの最大の輸出国であり、市場のおよそ30%を占めている。「フェデルヴィニ(Federvini)」の公開したデータによれば、イタリアは2019年、9万トン近いワインをロシアに輸出していた。これは、およそ1億2000万本、合計3億200万ユーロに相当する。

支援の構築


ウクライナ難民に宿泊場所や仕事、食糧を提供する団体「ア・テリトリ(‘A Territori)」は、資金集めなどを含む支援やボランティアについて、イタリア全土の参加機会をまとめた長いリストを公開している。主に寄付が呼びかけられているのは、消費期限の長い保存のきく食品、衛生用品、子どもや乳幼児の生活用品、有効期限が1年以上ある医薬品などだ。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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