マスクは、4日の米証券取引委員会(SEC)への報告書で9.2%のツイッターの株式を保有していることを開示し、アグラワルは5日にマスクをツイッターの取締役会に迎えると述べていた。
しかし、その計画が見送りになった今、マスクがツイッターに敵対的買収をしかけるという見方が浮上した。ウェブドッシュ証券のアナリストのダン・アイブズは「マスクがツイッターの役員になるというシンデレラストーリーは今や、彼とツイッターの間の戦いに変貌した」と述べた。
「ここから見えてくる筋書きは、マスクが役員室の隅で反対意見を唱えたり、特定の役員候補を後押ししたりするようなものではない。今後の数日のうちに、マスクはより敵対的で積極的な動きに出るかもしれない」とアイブスは付け加えた。
ジャック・ドーシーとアグラワルは、ツイッターの筆頭株主になったマスクに、取締役会のポジションを用意し、彼を受け入れるように動いていた。ツイッターは2019年に物言う投資家のエリオット・マネジメントが、同社の株式を取得し変化を求めた際に、同様の戦略をとっていた。
しかし、テスラやスペースXで混沌とした経営スタイルを貫き、ツイッターで物議を醸す発言を連発するマスクに、この戦略は通用しなかった模様だ。
ツイッターがマスクを取締役に迎える契約には、マスクの持ち株を14.9%以下に抑える条項が含まれていた。しかし、彼がその契約を見送った今、多くのアナリストは、「マスクがツイッターの持ち株比率を高め、最終的に支配権を確立する可能性が浮上した」と述べていると11日のCNBCは報じた。
マスクが本気で買収に乗り出すのなら、プライベート・エクイティや他の金融業者と手を組むことも想定できる。
マスクはあらゆる選択肢を検討できる
ツイッターは、メタやアルファベット、スナップのような他の多くのハイテク企業と同様な創業者を保護するためのデュアルクラス株式を持っていない。そのため、ツイッターは、敵対的買収から身を守るための「ポイズン・ピル」計画を採用する可能性があるが、一部のアナリストは、この戦略がマスクのさらなる怒りを買い、大きなリスクにつながると述べている。
「この嵐がどこに向かうかは予測できない。マスクは、あらゆる選択肢を検討できる」と、ゴードン・ハスケット・リサーチ・アドバイザーのDon BilsonはCNBCの取材に述べた。ウェブドッシュのアイブスも「これは明らかに非友好的な状況になりそうだ」と述べている。
ツイッターの株価は、10月から3月にかけて下落し、時価総額の半分近くを失っていたが、将来性のある企業の業績が伸び悩んでいることは、買収を行う企業にとって、株を安く買いあげるチャンスとなる。エリオットはまさにこれを実行し、2019年に株を買い占め、より積極的な成長目標やドーシーの後継者計画など、ツイッターの経営陣からいくつかの譲歩を勝ち取っていた。
その結果、ドーシーは11月にツイッターを去り、CEOの座をアグラワルに譲った。
しかし、マスクがツイッターの筆頭株主に浮上したことで、同社の株価は大きく上昇し、現在もなお3月末との比較で20%近く高い水準にある。つまり、敵対的買収に乗り出そうとするマスクは、自らの手で買収金額を釣り上げてしまったことになる。