言葉で説明してもらうのではなくやってみせてもらう
これを確認するためには、言葉での説明を求めても意味がありません。暗黙知は自分でも説明できないのです。メンバーの本当の理解度を知るためには、実際にやってみせてもらうしかありません。
ところがオンラインコミュニケーションは言語化しなければ伝わりにくいという特性がありますので、結局、一度ちゃんと会って仕事ぶりを確認してみる必要があります。
部下ができているか、できていないかを単純な「報告・連絡・相談」で判断してはいけません。膝と膝を突き合わせて、やっているところをきちんと観察して、どこがわかっていて、どこがわからないのかを「発見」する必要があるのです。
むしろ上司の暗黙知をいかに伝えるかのほうが問題
それで部下が実はわかっていることが判明したら一件落着です。わかっていなければ改めて教えてあげればよいだけです。
ですからご相談はそれほど難しい問題ではありません。難しいのはむしろ、上司の暗黙知をいかに部下に伝えていくかの方ではないでしょうか。
これはまさに野中郁次郎先生の企業の知識創造理論「SECIモデル」(企業の知識創造は「共同化(Socialization)」→「表出化(Externalization)」→「連結化(Combination)」→「内面化(Internalization)」というサイクルで生じるという理論)における「S」=「暗黙知の共同化」です。
もっとチームの創造性の低下を心配するべき
「暗黙知の共同化」とは、職人さんの弟子が親方の仕事を見て盗み、体得していくというイメージです。
非言語情報がうまく乗らないオンラインコミュニケーションではこの状況を実現するのは難しい。このため、ある人の暗黙知を別の人の暗黙知に移していく(共同化)ためには、リアルの場で一緒に仕事をするという行為が、今のところどうしても必要なのです。
また、既にある知識を伝達できるかという問題は確認すればよいだけですが、これから創造されるはずの新しい知識が「生まれなかった」ことは確認しようがありません。そうして、知らないうちにチームや組織の創造性は消えていくかもしれないのです。
ですから、上司たちは、部下の仕事ぶりを観察するのは当然ながら、自分の仕事ぶりを部下に見せることで、自分の暗黙知がそこはかとなく伝わっていくよう努力すべきなのです。
グラフィックファシリテーター(R)やまざきゆにこ=イラスト・監修
曽和利光さんとリクルート時代の同期。組織のモヤモヤを描き続けて、ありたい未来を絵筆で支援した数は400超。
www.graphic-facilitation.jp
(この記事はOCEANSより転載しています)