ロビイストが見た「プーチンVS米国Psyops(心理戦)」情報

2022年2月14日、ロシア・モスクワでセルゲイ・ラブロフ外相と会談するロシアのプーチン大統領(Photo by KREMLIN PRESS OFFICE/Anadolu Agency via Getty Images)

米国の軍事用語には心理戦を意味する「Psyops(サイオップス)」という言葉がある。「Psychological Operations」の略であるが、今回のロシア軍によるウクライナ侵攻に際しても、このPsyopsが展開されたのではないかと、まことしやかに伝えられている。

例えば、先月26日、バイデン大統領がポーランドを訪問した際に「この男は権力の座にとどまってはいけない」と発言。「この男」とはもちろんロシアのプーチン大統領のことを指すが、米国のメディアはこの発言を、当初の原稿にないアドリブだったと報じ、失言だったのではないかという意見も国内外から発せられた。

実際に、これらの反応や反発を緩和するため、政府の高官であるブリンケン国務長官は「米国はロシアの体制を変えるという戦略はとっていない」と、バイデン大統領の発言の「火消し」にまわっていた。

しかし一方で、過去CIAの実務トップを務め、いまは民間でコンサル会社を経営するジャック・デバインなど在野の識者たちは、同時期に「この紛争のエンドゲーム(終幕)は、彼(プーチン大統領)がいなくなるしか他に方法はない」とPodcastなどでバイデン発言に沿った援護射撃をしている。

これら一連の動きは、奮起した年寄りたちの戯言と切って捨てることもできれば、実は綿密に企図されたPsyopsと見ることもできる。遡れば、一部の専門家や知識人の間では、ロシアがウクライナへと侵攻する以前より、米国はそのリスクを承知しながらも、プーチン大統領を心理的に挑発して、戦闘に追い立てたという論調も見られた。

果たして、米国は本当にロシアによるウクライナ侵攻に関して、軍事的心理戦であるPsyopsを実践したのか。内部者が口を開き公に証言することなど無いし、ボロが出ない限りその証拠は得られないものの、その片鱗とテクニックは垣間見ることはできる。

しばしばビジネスの最前線でも応用されるPsyopsの実態及びテクニックを紹介しながら、検証してみたい。
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文=山崎ロイ

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