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2022.04.09

人々がより寛大に、米国でコロナ禍のなかで寄付額が増加

Getty Images

戦争や自然災害、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックといった、途方に暮れてしまうような危機が訪れると、人間は、普段よりも自己中心的な行動をとるようになる傾向と、同じ社会で暮らす他者への寛大さが増す傾向の両方が生じる可能性がある、と心理学者たちは述べている。

パンデミック初期に35カ国で収集されたデータによると、政府の呼びかけにもかかわらず、不安に駆られた人々が平静さを失い、トイレットペーパーや手指消毒剤などの必需品を買いあさったり、買いだめしたりする傾向が強かった。しかしその一方で、大きな危機が訪れるかもしれないという脅威を察知すると、社会的な結びつきが強まる流れが加速する可能性もある。

例を挙げよう。

インディアナ大学のリリー・ファミリー・スクール・オブ・フィランソロピー(Lilly Family School of Philanthropy)がパンデミック中に実施した調査では、「いつものサービスを受けられなくとも、提供側の個人や企業に対して支払いを継続するかたちで社会を支援した」と回答した人が半数近くに上ったことがわかった。

社会が、複数回にわたる危機を乗り越えようとしているときに、過度に自己中心的な行動と、寛大な姿勢のどちらが勝るのだろうか。この問いについて理解を深めようと考えた、アリエル・フリードマン(Ariel Fridman)をはじめとするカリフォルニア大学サンディエゴ校の研究者たちは、2つの時系列データセットを詳しく調べた。

オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で2022年3月に発表されたこの研究では、パンデミック発生中の米国に暮らした人々は、「災難時の思いやり(Catastrophe Compassion)」を見せ、金銭面でより寛大だったことが明らかになった。

1つめのデータセットは、慈善団体評価機関「チャリティ・ナビゲーター(Charity Navigator)」が収集した、2016年7月から2020年12月までに米国で行われた慈善寄付69万6942件に関するものだ。このデータには、各寄付の金額、寄付先の慈善事業、慈善事業の区分(環境や福祉といった事業の目的)、寄付者が居住する郡などが含まれていた。

2つめは、米国で1003人が参加した「独裁者ゲーム」で得られたデータセットだ。独裁者役の人が10ドルを与えられ、無作為に選ばれたパートナーに、それをいくら分け与えるかを決められるというこのゲームは、2020年3月から同年8月までに6回実施され、「コロナ禍の脅威レベル」と「人々の寛大さ」の関連性を解明するために分析された。各回における「コロナ禍の脅威レベル」は、郡ごとの1日あたりの死亡者をもとに算定された。
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翻訳=ガリレオ

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