ディアジオは2007年、ディディ(コムズ)を同社に招き、シロックに力を貸してほしいと頼んだ。
シロックは、ブドウのモーザック・ブラン種とユニ・ブラン種を原料にした、滑らかでユニークなスーパープレミアムウォッカだ。とはいえ、バカルディのスーパープレミアムウォッカ「グレイグース(Grey Goose)」と比べると、かなり影が薄かった。当時のシロック年間売上は4万ケースで、グレイグースの3%にすぎなかった。
しかしコムズは、弱小ウォッカブランドの単なるお飾りになるつもりはなかった。ブランドを再構築するために力を提供したい、と本気で考えていたのだ。
コムズは、ブランドマネージャーならびに最高マーケティング責任者(CMO)としてシロックに参加することになった。「シロックのすべてに関与している。ボトルデザインからフレーバー選び、最終的な味の確認、広告からプロモーションまで、何もかもだ」とコムズは言う。
「私のようなかたちのパートナーシップは珍しい。ここで強調すべきは、この業界が意思決定レベルで多様性に欠けていて、私の関与が転機となったことだ」
コムズがパートナーとして関与し始めたころ、シロックの年間売上はわずか4万ケースだった。それがいまや、熱狂的なファンがついており、シロックと名指しで注文されるほどだ。バーの棚に必ず置かれている定番ウォッカであり、富裕層に好まれている。「年間の全世界売上は200万ケースだ」とコムズは胸を張る。
ディアジオ北米部門の最高マーケティングおよびイノベーション責任者エドワード・ピルキントン(Edward Pilkington)はこう話す。「ディディの通称で知られるショーン・コムズはディアジオにとって、15年以上にわたる素晴らしいパートナーだ。当社はコムズとともに、ウォッカというカテゴリーを創造的に破壊し、常に革新的な商品を届け続けてきた」
コムズは、「ディアジオとパートナー契約を結んだのは、有色人種が意思決定に参加したときに何が起こるのかを、業界に示したかったからだ」と語った。「とても並外れたことなんだ」