「地域資源の活用」をコンセプトに、規格外農産物の流通や、フェミニンケアブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」などを手掛ける企業だ。小林はここで、「持続的に農家を応援する仕組み」と「すべての女性が生き生きと輝ける社会」の実現を目指している。
ひと月に300時間近く残業をし、「鉄の女」とも呼ばれた仕事人間が、なぜ福島にたどり着いたのか。どんな思いでブランドを立ち上げたのか。福島と東京との2拠点生活を送りながら挑戦を続ける小林に、話を聞いた。
「いつかは福島の人の役に立ちたい」
東京出身の小林が、「福島県で起業したい」という思いを抱いたのは、新卒で入局した衆議院調査局で1年目の終わりを迎えた頃だった。きっかけは、東日本大震災だ。
「震災後すぐにボランティアに参加したものの、体力面などから役に立てた実感がなかったんです。なのでそれ以来、『いつかは必ず福島の人の役に立ちたい』という思いを持ち続けていました」
5年後、日本総合研究所に転職。そこで国見町の地方活性化事業に携わり、福島との縁が生まれた。観光や商品開発、販路開拓、農業などを手掛ける中で、「自分はもっと、国見町で何かできるのでは」という直感が働いたのだという。
その想いをふくらませる形で、地元とのつながりを活かしながら、2017年に「陽と人」を設立した。
「鉄の女」として働き詰めだった若手時代
2020年1月には、女性のデリケートゾーンケアに特化したブランド「明日 わたしは柿の木にのぼる」をスタート。
国見町の特産品である「あんぽ柿」の製造過程で廃棄される果皮を原料に、デリケートゾーン用のソープやセラム、オイルなどの5製品を展開している。フェミニンウォッシュ 50ml(税込3190円)、フェミニンセラム 80ml(税込4400円)、フェミニンオイル 30ml(税込4400円)といった価格帯だ。
ブランド名には「働くこと、休むこと、遊ぶこと、⾷べること、暮らすこと、⽣きること、どんな時も、うえを向いて意思をもって⾃分らしい選択をしていたい」という想いがこもっている
小林がフェムケアブランドにこだわった背景には、公務員・会社員時代に直面した女性ならではの“壁”がある。
それは社会人1年目の配属初日から始まった。上司から「女性のキャリア入職者で、私大の出身者は初めてだ」という言葉を掛けられたのだという。
「『男性の私大出身者はたくさんいるのに、なにそれ』と驚きました。私は学生時代にジェンダーキャップを感じることがなく、『そんなもの平塚雷鳥の時代の話だ』とすら思っていたんです。でも、社会に一歩出ると、性別が女性であるだけで不利になる可能性があるのか、と実感しました」