カーギルのエクスポージャーは、ウクライナでの紛争によって被る可能性がある損失をはるかに上回る。同社は今月初め、ウクライナでの救援活動に2500万ドルを寄付すると発表したが、その金額は、同社の年間売上高のごくわずかな一部だ。
ミネソタ大学経営大学院と法科大学院のポール・M・ヴァーラー教授は同社について、ロシアとウクライナ両国の間で、外交官のような役割を果たしたいと考えているのではないかと述べている。
「世界」に焦点
ウクライナ国民には、「ホロドモール」の記憶がある。1932から翌33年にかけてソ連が引き起こし、何百万ものウクライナ人が命を落とした大飢饉のことだ。ソ連は当時、ウクライナ産の食料のうち国内向けとする量を制限。多くを輸出することにより、計画的に大飢饉を起こすことを画策したとされている。
一方、ロシアとウクライナの小麦の輸出量は、合わせると世界全体の3分の1近くになる。戦争によってその両国の輸出量が減少することで、今年は中東と北アフリカを中心に、数百万の人々が危機的な食糧不足に直面する恐れがある。
国際食糧政策研究所の上席研究員、デビッド・ラボルドは、「約2000万トンのウクライナ産の小麦が、市場に届かないかもしれない」「つまり、それをどう埋めるかについての選択肢が非常に限られた、新たな空白が生まれることになる」と指摘している。
カーギルによると、同社が重視するのは、一つの国ではない。それは、「世界のフードシステム」だ。