「コンシャス・トラベル」の創業者に聞くサステナブルの先
英国やカナダで独立系コンサルタントとして世界の観光業界で45年の経験を持ち、UNWTOやオーストラリア政府も戦略の中心に据える「コンシャストラベル」という概念を提唱し、持続可能な旅行業の戦略的推進家であるアンナ・ポロック氏に再生型観光をサステナビリティと区別する主な特徴について聞いてみた。
持続可能な旅行業の戦略的推進家、アンナ・ポロック氏
「再生型観光は、GDPの目標成長数と観光客依存経済のモデルよりも、よりスマートで多層的、かつ環境に優しく、混雑の少ない新たな観光への復帰策として、正にBuild Back Betterな手法(前よりもよく立て直す)として注目されています。
最もシンプルに言えば、再生とは、生命が繁栄するための肥沃な条件を作り出すことと言えます。例えば失われた原住民の文化を再生することは、人間のみならず全ての生命体の生態系全体の繁栄、つまり永続的に自律的に栄えるコミュニティを生み出すのです」
たしかに観光は単なる独立したセクターというより、農業や飲食業、伝統工業からモビリティ、健康管理や福祉、デジタルなどあらゆるセクターにまたがるダイナミックな産業だ。
再生型観光は、コミュニティや地域全体を一つの生命体・エコシステムととらえ、常に相互作用し、進化し、自己組織化し、効率的に学習しながら適切な豊かさ、バランス、人間だけでなくあらゆる生命や回復力を支え、大きな幸福のシステムに貢献する条件を作り出すために不可欠なのだとポロック氏は主張する。
ポロック氏資料 再生型の地域エコシステムの相関図
「再生型の観光マネージメントを適切に行えば、その地域がかつて良かった状態、つまり綺麗な空気や水、健全な土壌などに恵まれていた状態や、健康でポジティブに関わりあう人々の繋がりというような理想的な状態であることを可能にするのです」
「農業と食糧危機」の課題をツーリズムが再生する
ポロック氏が世界のツーリズムシーンで注目される起業家やコンサルタントと共に乗り出したのが農業と食糧システムの再生に特化した新しいプロジェクト、「Host for Life」 だ。
中心的メンバーであるポーランドの起業家、アンナ・ドロジュドフスカ氏は、「ガストロノミーツーリズム(その土地の気候風土によって育まれた食を楽しみ、その土地ならではの食文化に触れることを目的としたツーリズム」)の専門家でもある。
ポーランドの起業家、アンナ・ドロジュドフスカ氏
「大規模農業は世界の気候変動の主たる要因と言われていますが、食品の流通、パッケージや廃棄まで食糧システムをひとつと捉えれば、その破壊力は甚大です」
食と農、そして観光の接点にあるもの、それは土壌だとドロジュドフスカ氏は言う。