M&A業界に対して、上記のようなイメージを持つ人が多いのではないだろうか。
確かに企業同士の合併や売買には、人も物も金も大きく動く。そのダイナミックさは何物にも代え難い、やりがいを生むのかもしれない。しかし、自身の仕事に、大きな責任を伴うのも事実である。
昨今、M&A業界には様々な業界から腕に自信のあるビジネスパーソン達が多数流入しているという。
今回の主人公たちも、近年、異業種からM&A業界に飛び込んだ2人だ。2020年にM&A総合研究所に入社し、社内最速となる入社3カ月で案件成約をした銀行出身の栗原章充(くりばらあきみつ )と、2021年に入社した大手総合商社出身の加藤大地(かとうだいち)。彼らはM&A業界に挑戦することで一体何を得ようとしているのか。
また、数あるM&A仲介企業の中で、なぜM&A総合研究所を選んだのだろうか。
企業の倒産や廃業を、ただ見ていることに耐えられなかった
銀行で新卒から約7年半を過ごした栗原章充は、様々な銀行業務に携わり、法人営業として多くの企業を担当してきた。新人時代から百戦錬磨の企業経営者達と対話し、資産運用や企業課題解決の提案をする銀行の仕事は、やりがいも十分。年を重ねるにつれ、成長も感じていた。
しかし、景気の低迷が続き、担当企業でも倒産や廃業を選択する企業がいくつか出てくるようになり、栗原は自らの仕事に疑問を持つようになる。
企業再生支援や資産運用、事業承継支援を進める中で、M&A案件にもいくつか携わった。ただ、M&A業務は本部行員やM&A専門の提携企業が主導して進めるため、支店担当の栗原にできることは限られていた。
「会社の未来を決定付ける局面で、私ができるのは経営者の不安に寄り添うことぐらいだったんです。これまで信頼関係を築いてきたのに、M&Aの場面では彼らをサポートすることができない。不完全燃焼というか、やりきれない思いでしたね」(栗原)
「自分の仕事は本当にこれでいいのか?」いくつかのM&A現場に携わるうちに、栗原の疑問は大きく膨らんでいった。さらに栗原を大きく動かしたのは、社会的なM&Aのニーズの高まりを肌で感じるようになったことだ。事業承継や業績不振で企業存続への課題を持っている企業は数多くあった。
「M&Aの領域には大きなビジネスチャンスがある。であれば、経営者の課題にもっと寄り添い、一緒に考え、解決できる仕事がしたい」(栗原)
目指すはM&A業界。栗原は自らのフィールドを変える決心をした。
栗原章充 2020年入社/群馬銀行出身
大手商社に入社し、希望の配属──それでもモチベーションは降下を続けた
一方、新卒で大手商社に入社した加藤は、希望していた自動車関連の部署に配属となった。「日本の高品質な製品を海外につなぐ仕事がしたい」と考えていた加藤にとって、まさに夢が叶った就職だった。
担当したのはトレードと事業投資。海外の事業会社(ディーラーなどの子会社)の管理担当者として経営状況をまとめて社内にレポートするなど、様々な経験を積んだ。
「財務諸表や営業成績を基に次のアクションを提案、議論する仕事などを任せてもらっていました。商社の仕事はグローバルな取引を展開するので、そのスケール感は刺激的でしたね。若手ながらマネジメント的な視点で課題に対峙することができ、既存事業の変革や今後の成長戦略の考案をできる点は大きなやりがいでした」(加藤)
そう語る加藤だが、仕事を続けていくうちに、自らのモチベーションが下がっていくのを感じるようになった。自分でも驚くほどに仕事にやりがいを感じられなくなっていく。原因は「仕事を動かしている実感がないから」だった。
「海外の事業会社のレポートをいくら作っても、社内に向けた発信にしかならず、それがどう機能し、どう役立っていくのか......全く感じることができなかったんです。自分の仕事が何のためにあるのか、手応えがなくて。仕事にワクワクしないことに危機感を感じ、ここままじゃダメだと転職を考えるようになりました」(加藤)
まさに大企業ならではの悩みだろう。
転職活動を始めた当初は、コンサルティング企業やベンチャー企業を候補にしていたという加藤。企業選定の条件は「自分で案件を抱え、ハンドリングできること」「形のないものを扱い、大きな感謝を得られること」「もちろん報酬もしっかりと」だった。
いくつかの企業を見ていくうちに、それらが全て叶えられるのはM&A業界だと気付く。企業同士の合併や買収という重大局面に携わる仕事、「ここでなら、価値ある仕事をしているという実感を得られるはず」いつしか加藤はそう確信していた。
業界で異彩を放つM&A総合研究所、「ここなら成長できる」
社会的ニーズを受けて新規参入が相次ぐM&A業界は、今、大小様々な企業がひしめき合っている。従業員数1,000人規模の企業、上場企業、グローバル展開企業など多種多様。しかし、2人はM&A総合研究所を選んだ。それはなぜだったのか。
「正直、ここまで差が出るのかと感じたんですよね......」(栗原)
ふいにそう答えたのは栗原だった。社長の佐上峻作と面談した際のことだ。自分にも金融業界でスキルを磨いてきた自負はあった。しかし、自分と同い年の佐上は想像よりもはるか上にいたのだ。
「他の企業にいると、絶対に出会えない人物だと思いました。M&Aというレガシーな業界にAI・DXといったテクノロジーを導入して風穴を開け、挑み続ける。佐上のような人ともっと出会いたいし、一緒に仕事をしたい。業界も規模感も180度違うからこそ得られる出会いや成長が、ここにはあると感じてM&A総合研究所を選んだんです」(栗原)
一方、「30歳まで商社にいるのはまずい」と感じていた加藤は、「むしろ、これから大企業になっていくフェーズというのも、魅力の一つだった」と語った。
「成長段階の企業だからこそ、企業成長に対する自分の影響力をダイレクトに感じられます。他のM&A企業も見ましたが、ここでなら自分の裁量で仕事をハンドリングし、責任を持って最後まで案件を担当できると感じたんです。自分だけが成果を出すのではなく、全員で成果を出そうとする姿勢、チーム感にも好感を持ちました」(加藤)
加藤大地 2021年入社/丸紅出身
M&A総合研究所は社員数100名未満(2022年4月現在)。確かにこの規模だからこそ感じられる責任があり、同時に、個々の成長や企業成長への貢献度も実感しやすいと言えるだろう。2人が欲しかったのは、その実感だったのだ。
没頭できる仕事があるから、人生は楽しい
ところで、これまで栗原は銀行で、加藤は商社で、共に「商品を売る」仕事をしてきた。しかし、M&Aアドバイザーとなった今は、企業という「明確な形をなさないもの」を扱っている。そこに難しさはないのだろうか。
栗原はこの問いに「違う筋肉を鍛えているようだ」と答えた。その上で、M&Aの仕事における真の面白さはむしろ、そこにあると語った。
「M&Aディールには大きな筋書きはあるものの、毎回企業同士の業種や個性、規模、目的が違っています。だからこそ我々は毎回違うシナリオを描く必要がある。オーナーに寄り添いつつ、プロフェッショナルな視点から、どのような戦略、条件で成約に結び付けるかを考え抜き、演出するのが我々の仕事。一つひとつの案件に刺激があり、毎回鍛えられる。それがこの仕事の面白みですね」(栗原)
「楽しいですよ、もちろんその分大変ですけど......」と笑う栗原の言葉に、加藤も大きく頷いた。加藤自身は今、まさに栗原のいうM&A業務の面白さを満喫している最中だという。
「商社にいた頃は、自分がその場所で働き続けている理由が上手く言語化できませんでした。何のためにやっているんだろう、と毎日自問自答していて、苦しかったんですよね。でも今は、この仕事がやりたいからここにいると断言できます。まずはそれがうれしい。四六時中仕事のことを考えてしまうこともありますが、これこそが望みだったので、満足です」(加藤)
水を得た魚という表現がぴったりな2人。人生の大半の時間を捧げるからこそ、納得のいく仕事がしたい。その思いに答えたのが、M&A業界であり、M&A総合研究所だったのだ。
ワークライフバランスが叫ばれるようになって久しいが、ライフの充実が、仕事を充実させるだけではなく、仕事の充実がライフの充実につながるのだと改めて感じた。
夢中になれる仕事に出会えることほど、幸せなことはないのだ。