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- Innovation Super Sessions -
Content Personalization That Delivers Business Value
最適な顧客体験をコンテンツのパーソナライズで生み出す
Adobe Experience Manager
顧客体験管理(CXM: Customer Experience Management)に特化したクラウド「Adobe Experience Cloud」。コンテンツやデータの管理、パーソナライゼーション、カスタマージャーニーの構築や最適化、AI(Adobe Sensei)によるデータ分析や活用など、デジタルマーケティングで優れた能力を発揮する。
そこに内包される数多くのアプリケーションのなかで重要な意味をもっているのが、ハイブリッド型CMS(コンテンツ管理システム)およびデジタルアセット管理ツールであるAdobe Experience Manager(Sites/Assets)だ。これはレスポンシブサイトの作成から、ウェブサイトをスマートフォン向けに変換するプログレッシブウェブの実現、サイネージ(電子広告)作成、マルチデバイス対応のヘッドレスアプリケーション作成までを効率的に一元管理・配信できる機能をもつ。
アドビのAdobe Experience Manager戦略製品マーケティングディレクターであるハレシュ・カマーは、セッションで以下のように言及した。
ハレシュ・カマー アドビ Adobe Experience Manager戦略/製品マーケティングディレクター
「現在、Adobe Experience Manager Sitesは、チャネルをまたいだデジタルコンテンツを作成するためのツールとして、グローバルで数多くの企業に採用されています。
例えば世界中にファンをもつ自動車メーカー『フォルクスワーゲン』は、クラシックカーと部品ビジネスのコンテンツすべてをAdobe Experience Manager Sitesで管理しています。ヘッドレスCMSにより、ウェブサイトやモバイルアプリ向けなどのあらゆるチャネルで、デジタルコンテンツを迅速に配信することに成功しています」
『フォルクスワーゲン』の公式ウェブサイト
他にも金融サービス、小売、B2B消費財、ハイテクなど、数百社もの企業の導入実績があり、どの企業もアドビ製品を用いて、これまでのルールベースの体験から、「大規模なパーソナライゼーション(Personalization at Scale)」へと進化している。
コンテンツ制作においては、画像、動画などのDAM(デジタルアセット管理システム)Adobe Experience Manager Assetsと組み合わせることで、アセット活用・再利用を効率化するという。
そうしたAdobe Experience Managerの戦略的な柱は以下の3つだとカマーは説明する。
1.Content for All
「Adobe Experience Manager Assetsにより、部門やチームをまたいでコンテンツを共有し、デジタルアセットを自動的に表示します。例えば、Adobe XDのテンプレートをもとにローコードまたはノーコードでAdobe Experience Managerのサイトを素早く制作することが可能となり、利便性が高まりました」
2. Experience Intelligence
「データと機械学習により煩雑でミスの多い作業を削減、効率化を図ります。自動フォーム変換サービスの進歩によりIT担当者の負担は最小化され、顧客がどこにいてもサービスが提供できるようになりました」
3. Omnichannel Delivery
「一度作成したコンテンツは、複数のチャネルで再利用するのが効率的です。ヘッドレスCMSサービスで、アプリのコンテンツをヘッドレス管理しSPAやフロントエンド体験を強化します」
ビジネスの成長を推進するイノベーションを加速させるために、アドビはクラウドネイティブによって企業が常に先進テクノロジーを享受できるよう努めている。
さらに、Adobe Experience Manager Assets、Adobe Workfront、クリエイティブツールのプラットフォーム「Adobe Creative Cloud」が連携された。これにより、以前から切望されていたクリエイターとマーケターがシームレスにデザインワークフローを管理する体制は、整えられた。
先進事例紹介
Anthem:ヘルスケアを取り巻く環境への素早いアプローチが可能に
次に登壇したのは、Anthem オムニチャネルマーケティング担当副社長 ジェイ・シヴァサイラムだ。シヴァサイラムは医療・ヘルスケアサービスを大規模に展開するAnthemが、アドビとパートナーシップを組むことによって実現した変革について語った。
ジェイ・シヴァサイラム Anthem オムニチャネルマーケティング担当副社長
「パンデミックは、世界中に大きな変化をもたらしました。当社において重要性が高まっているのは、バーチャルな初期診療です。外出制限や隔離状況にある場合でも、PCやモバイルデバイスで、医師、看護師、薬剤師にスムーズに連絡する仕組みをつくることが急務でした」
そのためのデジタル改革はアドビ製品の導入により、急速に進んだという。
「まずビジネスの整合性を担保すること。そのためパンデミック以降難しくなっていた企業内のコミュニケーションを、アドビ製品の機能を活用したバーチャルイベントの開催によって補いました。
次の課題は伝達の迅速なシステムづくりです。新しい検査方法や薬局、臨時クリニックなどの情報を顧客へ迅速に伝えるためにAdobe Workfrontを活用して、従来は数日〜数カ月かかっていたメッセージ配信を、数時間で完了できるようになりました」
最後はオムニチャネルエンゲージメントの確立です。顧客がどのような環境でアクセスしてもパーソナルな体験を提供できるようにシステムを構築しました」
- Sneaks -
テクノロジー先行公開イベント「Sneaks」が垣間見せる未来
Sneaksは世界中のアドビ社員(エンジニア、データサイエンティスト、研究者、プロダクトマネージャー、デザイナーほか)から寄せられた多彩なアイデアをもとに選抜され、優秀なアイデアに対してアドビの研究部門が取り組んでいる試験段階のプロジェクトを先行して公開するイベントである。過去に紹介された機能の約6割が、製品として実際にリリースされているという。
セッションをリードしたのは、女優のクリスティン・ベル。総勢7名のイノベーターが、それぞれのアイデアを次々と披露する。今回はそのなかから、特別に興味深いイノベーションを、いくつかピックアップしてみたい。もちろんどの案も、パーソナライズされた顧客体験を大規模に刷新するための発明である。
女優のクリスティン・ベル
「Project Demand Detector」
このプロジェクトでは、AI(Adobe Sensei)と機械学習を使って、eコマースサイト使用時の「検索結果:ゼロ」という不快な顧客体験を回避することを目的としている。企業は機会損失を抑えられるようになるため、ロイヤルティの高い顧客基盤を維持することができる。
「人気商品のトレンド予測や消費者需要の把握はいつも企業を悩ませますが、この仕組みを使えばAIと機械学習を用いて数百万件のデータを総合的に分析し、需要予測をはじき出すことができます」
在庫切れ商品から最も需要が高いものをピンポイントで特定できるため、マーチャントは商品の仕入れるタイミングを見極めることができる。また、Adobe Commerceと連携しているため、仕入れに最適なベンダーまで提案してくれるという。
「Project Right Sized」
オンラインで購入した商品の約半数がサイズの問題で返品されていると言われている。このプロジェクトでは、AR(拡張現実)で商品の実際のサイズをミリ単位まで正確に把握し、モバイルアプリに表示させることができる。
「このテクノロジーには、アドビ独自の機能が2つ存在します。1つ目は、モバイルアプリの画面上に実物大で表示されること。2つ目は、異なるWebサイトの複数商品をARで同時に表示できることです。これは、他のアプリでは真似できません」
企業は、返品率の低下と顧客満足度を高めことができる。
「Project Design Decoder」
視覚障害者は世界に3億人以上いるといわれるが、ご存じだろうか。アドビは、機械学習とコンピュータビジョンを応用することで、彼らのオンラインショッピングがより使いやすいものになるという。障害者のダイバーシティーを支えるインクルージョンの観点からも、このイノベーションは画期的だ。
「ともすれば視覚障害者は、デジタルファーストの経済のなかで取り残されてしまいがちです。しかしこのDesign Decoderは、弱視や色覚障害の消費者にとって認識しづらい商品画像を、彼らが認識しているであろう色や柄に調整し、瞬時に変換することができるのです」
SDGsの考え方からも、マーケットの開拓としても、非常に興味深いイノベーションではないだろうか。
こうして発表されたイノベーティブなプロジェクトは、そう遠くない未来に「Adobe Experience Cloud」に実装される可能性が高いものばかりだ。それらのトピックを知ることは、ビジネスパーソンが未来のビジネスを構築しようと考えるときに、非常に重要なインスピレーションとなるはずだ。
今年の「Adobe Summit」では、世界で活躍中のビジネスリーダーや業界をリードする顧客体験体現者など、様々なテーマで200以上ものセッションが行われた。前編、後編で紹介できなかったセッションは、アドビ公式ウェブサイトからいつでもオンデマンドで視聴できる。
「Adobe Summit」米国本社よりオンデマンド配信中 ※一部、日本語字幕あり
「INSIGHTS from Adobe Summit」アドビ社員による解説ウェビナー ※オンデマンド配信