ビジネス

2022.04.04

ベンチャー投資のカギは「キャピタル・フォーメーション」にあり

世界経済のエンジンとなった米カリフォルニア州のテクノロジー企業集積地、通称「シリコンバレー」。その成功により、産学官が連携したハブが世界的に注目を浴び、各国・各都市がそのモデルを模倣しようとしている。グローバルな世界と連携する東京を中心とした「スタートアップ・エコシステム(生態系)」は育成できるのだろうか。早稲田大学ビジネススクール(WBS)の牧兼充 准教授が、エコシステムを形成する関係者へのインタビューを通じてその課題と可能性を探る。

日本のベンチャー投資業界で黎明期から活躍してきた「Sozo Ventures」が振り返る「日本のベンチャー投資業界」の過去、現在、未来。同社は、Twitter(ツイッター)やSquare(スクエア、現ブロック)、Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)といった日米のスタートアップに出資する一方で、スタートアップと大企業間の協業や提携を実現してきた。今回は、同社共同創業者兼マネージング・ダイレクターのPhil Wickham(フィル・ウィックハム)が、ベンチャー投資を体系化した投資メソッドである「Capital Formation(キャピタル・フォーメーション)」について語った。


牧 兼充(以下、牧):フィルさんには、早稲田大学ビジネススクール(WBS)でベンチャー・キャピタルに関する講義を受け持ってもらっています。現役のベンチャー・キャピタリストが、アカデミアを通じて学生に発信していくことの重要性とはどういったところにあるのでしょうか。

フィル・ウィックハム(以下、ウィックハム):いわば「恩返し」です。今の私があるのは、先達による指導、助言、そして人脈づくりあってのことです。例えば、カウフマン・フェローズでCEOをしていた頃、投資家に講演をお願いすると、話すためだけに東海岸から飛行機で来てくれたものです。彼らの厚意には今でも頭が下がる思いです。

そうしたこともあり、私自身も若い世代に対して知識を共有することで「恩返し」する義務を負っていると感じています。今までに出会ってきた素晴らしい人たちや、彼らの考えをキュレーションし、より多くの人に共有することで役立ててもらおうというものです。

それに、「Capital Formation(キャピタル・フォーメーション)」をメソッドとして教えるだけではなく、「起業家育成」の観点から教える機会があるのはとても有意義なことです。

:「キャピタル・フォーメーション」はまだ日本では馴染みが薄い概念です。この概念の意味と、生まれた背景について説明してもらえませんか。
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インタビュー=牧 兼充 写真=能仁広之

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