ビジネス

2022.03.31

ANA Xとサイバーエージェントの提携。主役たちが語る「未来データ」の価値

ANA X井上社長(中央)とサイバーエージェント内藤常務を迎え、DX JAPAN植野代表が提携の背景を聞いた。


植野:昨今のデジタルマーケはクリック率やコンバージョン率みたいなROI効率だけを追いかけた結果、ノイズのような広告を乱発しているケースもあるように思います。内藤さんがおっしゃったのは、そうではなくて、広告の受け手と発信者がウィンウィンになるような関係ですよね。それがブランド価値にもつながる。

内藤:そうですね。データにどう意味付けさせるか。特にリアルタイムに変わっていくものなので、属性以外の興味・関心や行動データを活用できるのか、どういうデータを持つのか、その辺がポイントになると思います。その時々で価値のあるデータをどう正しく価値付けするかといった、リアルタイムのデータが大事になる。

ボーダレスな組織との共同作業から生まれるセレンディピティ効果


共同チームによるプロジェクトがいよいよ始動する。サイバーエージェントはANA Xのデジタル広告配信事業への支援に加えて、デジタル人材の育成にも取り組む。
 
植野:井上社長とお会いした時に、サイバーエージェント社の企業文化について、「どうやったらああいうカルチャーになれるのか」すごく質問されていたことが、すごく印象に残っています。

井上:サイバーエージェントさんの企業文化には惹かれますね。自分たちできちんと考えていらっしゃる。組織にボーダーは関係ないという意識をお持ちになって、何か意図的にカオスを作って、そこから生まれてくる価値というものを提供されているのではないかと思うんです。

内藤:基本的に各グループは可能性のある分野であれば、自由に進める。お好きにどうぞ、というスタンスです。最低限こうなったら撤退というルールだけは決めています。

植野:撤退基準の厳しさは有名ですよね。シリコンバレーでは「エコシステムはジャングルに宿る」と言われていますが、多様な動植物が生息して広がっていくジャングルには力強いエコシステムがある。サイバーエージェントさんの、計画や分析に時間をかけるより、可能性があるものには全部張るという姿勢は、まさにジャングルを作りに行っている。撤退ルールを厳格に運用されているのも、ジャングルの弱肉強食の世界でとても理に叶っていますよね。

井上:こういう企業文化をお持ちのサイバーエージェントさんとの共同事業は、大きな宝になる予感がします。できると思わなかったものができる、セレンディピティを含めどうディベロップしていくかがキーになる。

内藤:大きく人が動いたり、物が動いたり、デジタル空間とはまったく違う世界なので、僕らはご一緒させていただく中で学ばないといけない。と同時に、僕らが広告の世界で扱ったことのない未来のデータを大きな価値に変えるビジネスにしていきたいので、必死にアイデアを出しながら形にしていきたいと思っています。

植野:企業文化までタッグを組む、DX時代の協業の理想モデルだと確信しています。協業の成果が、最初に形として出てくるのはいつくらいですか?

井上
:22年秋以降に提供を開始します。また、この4月からANA Xの社長は、現副社長の轟木が担います。轟木とはこの1年一緒にやってきて、価値観を含めて共有できています。彼が社長になってもブレることはありません。彼は過去、関空の民営化でリーダーシップをとった人物でもあり、その能力はとても高いです。4月以降、両社の新体制のもと、デジタル広告配信事業の展開に向けて本格的に準備を進めてまいりますので、どうぞご期待ください。私も離れるわけではなく、ANAグループ総がかりでサイバーエージェントさんと一緒に今回のチャレンジを実現していきます。

文=中沢弘子 写真=苅部太郎

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