BMWが生み出す、アートとクルマの芸術的なコンビネーション

力強くエレガントなクルマと、人々を魅了してやまないアートが融合した、BMWのアート・カー。世界的アーティスト、ジェフ・クーンズによる最新モデルと、47年にわたる歴史を紐解く。


まるでアメリカンコミックの世界から飛び出してきたような、色鮮やかで刺激的なクルマ。車体の両サイドに描かれた「POP!」の文字が、見る人の胸を躍らせる。この芸術作品と呼ぶべきクルマこそ、今年の2月に公開された、BMWアート・カーの20番目となる最新モデル「THE 8 X JEFF KOONS」だ。これは「BMW M850i xDrive グラン クーペ」の特別仕様車をキャンバスに、アメリカの現代アーティストであるジェフ・クーンズがデザインしたものだ。



BMWブランド・マネジメント・ディビジョンの本部長である遠藤に、アート・カーの最新モデルを見たときの印象を尋ねると、次のように語った。

「アートはともすると、わかる人だけわかればいいとか、富裕層の方だけが見られるとか、そういった階層を生み出す権威的なものにもなりかねません。ですが、ジェフ・クーンズはポップというテーマをもとに、万人に広く受け入れられる、ある意味わかりやすい存在として、このアート・カーをアメコミ風なものに落とし込んだのかな、という印象を受けました」

ニューヨークを拠点に活動するジェフ・クーンズは、1980年に個展を開催して以来、数多くの賞や栄誉を受けてきた現代アートの巨匠だ。ウサギのバルーン・アートや著名人のポートレイトを題材にした「彫像」シリーズなど、アメリカの大衆文化を捉えたアグレッシブな作品の数々には、彼の飽くなきチャレンジ精神が注ぎ込まれている。それはBMWアート・カーにおいても例外ではない。

BMWアート・カーとジェフ・クーンズのコラボレーションは、2010年に製作された17番目の「BMW M3 GT2」以来、今回で2回目。約10年の時を経て、再びコラボレーションが実現したきっかけを遠藤に聞いた。

「ジェフ・クーンズは、自分の限界に挑戦するアーティストとして非常によく知られています。限界を超えて更なる高みに挑戦し続けたいという想いが、彼の中にあるのです。前回の『BMW M3 GT2』を超える、さらなるコラボレーションを行いたいということが、今回の取り組みにつながっています」

10年に製作されたアート・カー「BMW M3 GT2」では、夜の街を疾走しているような加速感や爆発感が表現されていた。今回の最新モデルは、そこから着想を得たものだと遠藤は言う。

「前回のアート・カーでは、さまざまな技術的な限界もあり、できなかったことがあったと聞いています。テクノロジー的な限界だったり、着色が重すぎてしまったり。今回はそういった限界に最新テクノロジーを使って挑戦したのです」
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text by Jun Uehara / edit by Hirotaka Imai

この記事は 「Forbes JAPAN No.089 2022年1月号(2021/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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