「こうした環境では、ロシアの市場に対する投資を停止しなくてはならないのは明らかだ」。ブルームバーグの報道によると、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ首長国の政府系ファンド、ムバダラ・インベストメントのハルドゥーン・ムバラク最高経営責任者(CEO)は今週、ドバイで開かれた投資会議でそう表明した。「立ち止まって事態がどう落ち着くかを見守る」必要があるとした。
カタールのムハンマド外相も、ドーハ・フォーラムに合わせて応じた米CNNのインタビューで、「状況が改善し、政治の安定性が高まるまで」、ロシアに対する新規投資は行わない方針を明らかにした。
ムバダラやカタール政府の動きは、欧米企業のロシアからの一斉退出と同列に扱うことはできないものの、ロシア経済にとってはさらに痛打となりそうだ。また、ほかの大手機関投資家に対ロシア投資の見直しを促す可能性もある。
ムバダラやカタール政府の中心的な投資機関であるカタール投資庁はこれまで、ロシアの政府系ファンドであるロシア直接投資基金(RDIF)と共同で投資を実施してきた。
ガルフ・ステーツ・ニューズレターによれば、ムバダラとRDIFの共同投資の規模は2019年10月時点で23億ドル(現在のレートで約2800億円)相当とされ、ロシアの石油・ガス企業ガスプロムネフチ・ボストークへの出資などが含まれる。
カタール投資庁はロシアの別のエネルギー企業ロスネフチの株式を19%ほど保有している。
米調査会社ソブリン・ウエルス・ファンド・インスティテュート(SWFI)によると、カタール投資庁の推定資産規模は約4500億ドル(約56兆円)で世界の政府系投資ファンドの上位10位以内に入る。ムバダラも推定2430億ドル(約30兆円)の資産をもつ。
ただ、多くの欧米企業と異なり、中東の機関投資家はロシア権益の売却やロシアからの撤退まで検討している気配はない。ロシアに対しては、UAEのアブダビ首長国、クウェート、サウジアラビアなどもそれぞれの政府系ファンドを通じて投資を行っている。
ロシアにとって気がかりな兆候は、中国の一部の企業もロシアへの投資に及び腰になり始めているらしい点だろう。ロイターは、中国国有石油・ガス大手の中国石油化工集団(シノペック)が、ロシアでの石油化学事業とガス販売合弁会社に関する交渉を中断したと報じている。