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2022.03.30 18:00

事業の啓蒙はしない 新ビジネスを普及させるために口説くべき相手|​​Kaizen Platform 須藤憲司 #2

Kaizen Platform 須藤憲司

Kaizen Platform 須藤憲司

「世界をKAIZENする」をミッションに掲げ、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を支援するプラットフォームとサービスを展開するKaizen Platform。急拡大するDX市場を捉え2020年12月には東証マザーズへのIPOも果たした。そんな同社を牽引する代表取締役CEOの須藤憲司(すどう けんじ)氏に、起業家の素養や事業成長のポイントなどについて、DIMENSIONビジネスプロデューサーの中山航介が聞いた(全3話中2話)

第一話:勝敗は「3カ月」で決まる 水を止められるほどのピンチに実践したこと


──起業までの経緯や、現在の事業を選定された理由は。

実は最初から起業しようと思っていたわけではなく、まずは会社を辞めようと思ったのが始まりです。その時に、他に行きたい会社があるか考えても無かったので起業しました。ある意味、消去法での決断でしたね。

じゃあどんな事業をやろうかと思った時に、リクルート時代に手がけた「クラウドソーシング×バナー広告制作」の事業経験があったことを振り返り、それが示唆に富んでいました。

100人が100通りのバナー広告を作ったとして、どの広告のパフォーマンスが良いかはわかりませんよね。プロが主婦や学生に負けることも多々ある。実際「クラウドソーシング×バナー広告制作」の事業ではクリエイティブのプロとして仕事をやってきた社内の広告制作陣たちがクラウドワーカーに惨敗しました。

つまりクリエイティブな仕事というのは、時間やキャリアの壁を一瞬で超えることがある。何十時間かけて努力しようが関係はなく、ユーザーに喜んでもらえるかどうかが全てなのです。

そんなクリエイティブな仕事がデジタル領域で爆発的に増えてくる時代において、これまでの製造業モデル的な働き方はフィットしないと感じていました。オペレーションはAIやシステムの方が上手くできる時代において、もう一度「クリエイティブ」の仕事のあり方を考え直すべき時が来ている。そう考え、Kaizen Platformを創業しました。

──クリエイティブな仕事はAIでは代替されないのでしょうか?

例えば広告バナーを機械で大量に自動生成したとしても、現在ではそれらの良し悪しを人によってチェックするコストがかかります。例えば1000万パターンの広告バナーを作ったとして、それを実際の人でチェックをかけたり、広告で配信して結果を試そうとするとものすごいコストですよね。

そんなチェックコストをかけるくらいなら、ちゃんと人が考えて作ったクリエイティブを機械で収斂(しゅうれん)させていく方がまだコストが低いわけです。囲碁や将棋のAI精度の向上がすごいのは機械同士を戦わせられるからです。

クリエイティブの世界では現状、機械同士で学習させられないため効率が悪いのです。これも、いずれ技術的には開発されると思うのですが、その場合もクリエイティブの可能性を拡げることと、その中から良いものに収斂されていくことの両方がこの業務には必要で、全てをAIが代替するのはまだ先の話だと思っています。
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文=中山航介 提供元=DIMENSION NOTE by DIMENSION, Inc. 編集=露原直人

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