ビジネス

2022.03.29

21年前にたてた目標への計算式「心 x 社会システム x テクノロジー」

LIFULL代表取締役社長 /一般社団法人Next Wisdom Foundation代表理事 井上高志

発売中の「Forbes JAPAN」2022年5月号の特集「これからの『お金の使い方』」では、コロナ禍をはじめ大きな社会的役割を果たしたビル&メリンダ・ゲイツ財団、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブをはじめとした、世界および日本の起業家たちが取り組みはじめている「新しいフィランソロピー」の動きを取り上げている。

慈善活動だけでなく、多様な資金提供と活動を駆使して社会的インパクトの実現を目指す「フィランソロピー3.0」と呼ばれている動きだ。この起業家、経営者たちによる新しいフィランソロピーの動きを通して「新しい社会のつくりかた」の進化を見ていく。


7団体で代表理事や理事を務めるLUFULL代表取締役社長の井上高志。さまざまな組織を立ち上げる彼の目的は壮大な2つの人生の目標の達成だ。

「何をやってるのかわからない、とよく言われるから、整理しているんですよ」

LIFULL代表取締役社長であり、一般財団法人Next Wisdom Foundation代表理事などを務める井上高志はそう言って、一枚のスライドを見せた。

そこには、いまから21年前の32歳のときに掲げた「Well-being(人類の幸福)」「World Peace(世界平和)」という人生の目標を達成するための計算式が書かれていた。「心×社会システム×テクノロジー」というかけ算だ。

「人の心を解き明かし、資本主義をアップデートし、テクノロジーで加速させる。すべては、これら3つをかけ合わせて、価値を最大化し、目標を実現させることに通じている。事業でやるか、財団をはじめフィランソロピー活動でやるか、は収益性があるか、ないかの違い」と井上は話す。

現在、井上は、

(1)古今東西の英知を探求する、一般財団法人Next Wisdom Foundationの代表理事
(2)Wellbeingに関する研究に対して助成を行う、公益財団法人Well-being for Planet Earthの評議員
(3)国際平和の日(9月21日)を起点として平和な世界の実現を目指す、一般財団法人PEACE DAYの代表理事
(4)「自律型人材」を増やすための一般社団法人21世紀学び研究所の理事
(5)新産業創出と推進を支える政策や諸制度の整備の一般社団法人新経済連盟の理事
(6)栃木県那須地域で、国内最大規模のスマートシティ構想を行う、一般社団法人ナスコンバレー協議会の代表理事
(7)人を場所の制約から解放し、好きな場所で暮らし、学び、働き続ける社会をつくろうとしている、一般社団法人Living Anywhereの理事

を務めている。これらはすべて、前述の計算式にひもづいているという。

ビジョンを明確にして、複数の組織を立ち上げて、数多くの専門家や実践者と連携して活動を広げている点が井上の特徴だ。そして、事業でも社会課題解決型企業として、「利他主義」を根幹に、「公益志本主義」を掲げ、社会、地球環境もふくめた「八方よし」
を実現することを目指す。

「僕は不言実行が嫌いなんですよ。有言実行。掲げたら、どう実現するか、を徹底的に考える。人生の目標を掲げたときも、計算式はありませんでした。時間をかけて事業や個人の活動を実践しながら、生まれてきましたから」

そんな井上の人生ビジョンには時間軸も加わっている。井上が100歳の2068年に書かれているのは、「戦争、紛争のない社会が実現した第二次世界平和」だ。

文=山本智之 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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