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2022.03.31 08:00

日本一のビジネス本翻訳家が紐解く、アマゾンを世界一にした「ジェフ・ベゾスの言葉」

アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス / Getty Images

アマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾス / Getty Images

史上初の“本人公認”ジェフ・ベゾス本が、世界的なベストセラーになっている。彼自身が発した生の言葉をたどると、世界最高のカリスマを成功に導いた「原則」が見えてくる。

昨年12月に待望の日本語版が発売された『Invent & Wander ジェフ・ベゾスCollected Writings』。翻訳を手がけたのは、ミリオンセラー『FACTFULLNESS』、ピーター・ティールの『ゼロ・トゥ・ワン』など数々のビッグタイトルを担当してきた関 美和だ。50冊以上のビジネス書を手がける人気翻訳家だが、長らく外資系金融業界でファンドマネジャーとしても活躍し、昨年は旧友のキャシー松井らとベンチャーキャピタルを立ち上げている。

ビジネス書翻訳の第一人者にして投資JEFF BEZOSの専門家でもある関は、ベゾスの言葉をどう読み解いたのか。注目するフレーズについて自ら解説してもらった。


「最高の日だ!」

2021年7月20日、自ら創業したスタートアップが開発した宇宙船に乗り、同社初の宇宙旅行を成功させたアマゾン・ドット・コムの創業者ジェフ・ベゾスは、帰還後に開口一番、こう叫びました。

ベゾスにとって宇宙事業は単なる趣味ではなく、その裏には「人類と地球を救う」という壮大なビジョンがあります。彼が描く人類救済計画が実現するのは、はるか先でしょう。ただ、どんなに時間がかかっても、一歩ずつ着実に物事を前に進めています。頭のなかには、そこに至るまでのステップが明確に描かれているからです。そしてこの長期的に物事をとらえる姿勢こそ、経営者ベゾスをかたちづくる、いちばんの特徴と言えるでしょう。

彼が「長期思考」を大切にしてきた様子は、さまざまなエピソードから読み取ることができます。端的な例が、アマゾンの祖業である電子商取引(EC)に対する姿勢です。ベゾスが1997年に株主に宛てて出した手紙のタイトルはずばり、「長期がすべて」。株価の反応よりも、長期的に市場のリーダーとしての地位を固めることを考え、経営判断を続けるという意思表明を書き連ねています。短期の結果に一喜一憂せず、常に将来のビジョンに向かって、事業を続けていく決意が表れています。


創業3年目の1997年、アマゾンは時価総額4億2900万ドルで米株式市場ナスダック上場を果たす。利用者数は150万人超、売上は838%増と急成長。シアトルの自社施設にて。

「徹底して顧客にこだわる」という姿勢も、アマゾン創業当初から変わっていません。

「お客様は賢く、鋭い」「恐れなければならないのはライバル企業ではなく、お客様です」。顧客を第一に考える言葉は繰り返し、株主に宛てた手紙のなかに登場します。

もちろん、長期的なビジョンをもつことの重要性は多くの経営者が理解しているでしょう。しかし大抵の経営者は、市場や株主からの圧力によって、短期の利益を出すことを優先してしまう。長期の繁栄を犠牲にしてでも、目先の結果を追い求めてしまうのです。

ところが、ベゾスはそうした圧力に屈さない。何年も赤字が続き、株主からの圧力が高まっても、冷静に、自分の哲学を貫いていきます。2000年、ITバブルが崩壊しアマゾンの株価が80%以上下落した時期の株主への手紙でも、冒頭に「いたた。」と記した以外は、アマゾンの事業の経営指標がいかに上向いているかを、とうとうと書き続けています。
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文=蛯谷 敏

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