グーグルとアルファベットは、いずれもSandbox AQと資本関係はないが、ビジネス上の取引は継続している。Sandbox AQは、グーグル・クラウドと密接に連携し、彼らの顧客に耐量子暗号技術を提供するが、独占的な契約ではないという。「世界はマルチクラウドであることを認識する必要がある」とHidaryは話す。
Sandbox AQは、米国のMount Sinai Health Systemや日本のソフトバンクなど、複数の顧客と契約している。ソフトバンクは、今年後半に4G、5G、WiFiネットワークでSandbox AQの耐量子アルゴリズムをテストする計画だ。ソフトバンクで先端技術部門の責任者を務める湧川隆次によると、同社はネットワークの性能にSandbox AQのソフトウェアが与える影響を検証するという。「ソフトウェアの導入によって、来るべき6G時代に求められる安全な通信の実現に向けた大きな一歩になることを期待している」と湧川は述べた。
IPOは急がない
Sandbox AQは、ソフトウェアの提供から得られる収益を財源に、長期的な研究を行う予定だ。量子センサーは、GPSなどの位置情報から遮断された船舶や潜水艦が測位することを可能にする。GPSは、サイバー攻撃や物理的な攻撃に対して脆弱なため、最近ではバックアップとなる技術の必要性が議論されている。既に量子コンパスの実証実験を開始した企業もあるが、Hidaryは「量子センシングは研究開発段階にあり、市場に投入できるのはまだ先だ」と話す。
量子技術を提供する企業の中には、時価総額27億ドルのIonQや、時価総額7億5800万ドルのRigetti Computingのように、IPOを果たした例もある。Sandbox AQも近い将来、IPOを目指すのかとシュミットに質問すると、彼も株主も長期的な視点で投資をしているとしてそのシナリオを否定した。「私はこれまでに4社を上場させており、5社目のIPOを急ぐつもりはない」と彼は語った。