エリック・シュミットが支援する量子暗号企業Sandbox AQの実力

エリック・シュミット(Photo by Alex Wong / Getty Images)

量子暗号技術を提供する「Sandbox AQ」は、最近グーグルの親会社アルファベットからスピンオフし、アルファベット前会長のエリック・シュミットや、セールスフォース創業者のマーク・ベニオフが設立したベンチャーファンドから出資を得た。

Sandbox AQのCEOのJack Hidaryは今回調達した金額を「数億ドル規模」としているが、詳細な金額は明らかにしていない。資金の用途としては、現状55人のチームに技術力の高いスタッフを加えることと、研究開発を予定しているという。

Sandbox AQの「A」はAI、「Q」は量子(quantum)の略だ。シュミットによると、短期的な目標は、機械学習とAIを活用し、量子コンピュータを用いたサイバー攻撃からデータを保護するソフトウェアを開発・提供することだという。量子コンピュータは、量子物理学を用いており、その計算速度は最もパワフルなスーパーコンピューターを凌駕する。同社は、長期的には、トラックや船舶、航空機のナビゲーション支援への利用が期待される量子センサーの開発を手掛ける予定という。

早くも競争が加熱


量子コンピュータはまだ黎明期にあり、研究者は技術面をはじめとする多くの課題に取り組んでいる。一部の企業や政府は、それらの課題が克服される日に備え、データやネットワークの準備を進めている。「将来的には、暗号化されたデータを解読することが可能になるだろう。それが実現すれば、非常に大きな意味を持つ」とシュミットは話す。

IBMなどの大手企業をはじめ、IsaraやQuSecureなどのスタートアップも既存のコンピュータ上で動作する耐量子アルゴリズムを提供しており、Sandbox AQは厳しい競争にさらされている。同社の株主には、シュミットとベニオフのTIME Venturesに加え、ティー・ロウ・プライス、Breyer Capital、Guggenheim Partners、ビリオネアの投資家Thomas Tullが名を連ねている。彼らは、Sandbox AQがグーグルのサイバーセキュリティを構築した実績によって優位に立てると期待している。
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編集=上田裕資

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