元インスタグラム勤務の25歳
元フェイスブックのエンジニアであるカムリッシュによると、「ぜひ助けてほしい」という返事を得た彼らは、その日からさっそくテレグラムを通じて政府関係者らとミーティングを重ねたという。「このプロジェクトは、我々にとっても暗号通貨業界にとっても特別なものになるはずだ」と、30日から始まるセールを前に、カムリッシュは語っている。
ウクライナ政府に寄せられた暗号通貨の寄付はすでに約6600万ドル(約80億円)に達しており、デジタル資産を用いて戦時の資金を調達した最初の事例となった。今回のNFTのセールは、テクノロジーを駆使するウクライナ政府の最新の試みだ。
カムリッシュは、先月までフェイスブック傘下のインスタグラムのブロックチェーン関連のチームに務めていたが、会社を辞めてFair.xyzを立ち上げた。同社は、NFTの製作を簡単にし、コストを下げるソフトを販売しようとしている。
もう一人の共同創業者は、ゴールドマン・サックスのクオンツ・トレーディング部門に勤務していたアイザック・ベンタタ・ショクロン(Isaac Bentata Chocron)だ。二人はユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの同級生で、修士課程の学生として人工知能にチェスを教えるという長大な論文を共同執筆していた。さらに、同じく元フェイスブックのエンジニアのネイサン・コーエン(Nathan Cohen)も創業チームに加わった。
彼らは、ロンドン北西部の住宅地、フィンチリーの小さなオフィスを拠点としている。3人は敬虔なユダヤ教の信者で、安息日にはテクノロジーに触れてはならないという決まりを守るため、週に一度はインターネットから遠ざかっているという。
ウクライナ政府のデジタル部門を率いるフェドロフ副首相は、「Fair.xyzのチームの専門知識と経歴は、私たちのプロジェクトのすべての要件をうまく満たしてくれる」と述べている。
Fair.xyzは、今回のプロジェクトで金銭的な報酬を受け取らないが、うまくいった場合、起業したばかりのスタートアップが世界的名声を得ることは確実だ。同社は、最近シード資金調達を完了させたが、評価額や出資元に関しては明らかにしていない。
さらにこのプロジェクトは一過性のものにはならないと見られている。Fair.xyzとウクライナ政府は、今後も新たなNFTのセールを立ち上げる予定だ。「これは悲しい現実だが、戦争が長引けば長引くほど、作品は増えていくだろう」と、共同創業者のショクロンは話した。