「タイムトラベル」「瞬間移動」「ブラックホール」について、科学が今説明できること

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そういうわけで、最後に、一部の理論物理学者が今真剣に検討している説を紹介したい。テレポーテーションとタイムトラベルは密接に関連している可能性があるというのだ。物理学者の間で「ER=EPR」と呼ばれている新しい説によると、量子もつれ(テレポーテーションの理論的根拠)と、ワームホール(タイムトラベルの理論的根拠)には、深いつながりがある。これまではまったく関わりがないと思われていたが、アインシュタインが共著者と1935年に発表した2本の論文が、同じコンセプトを説明していたのではないかと考えられている。2本のうち1本はいわゆる「EPR論文」(著者はアインシュタイン/Einstein、ポドルスキー/Podolski、ローゼン/Rosenの3人。彼らの頭文字をとって、こう呼ばれる)で、量子もつれについて、ふたつの離れた場所にある量子の間に瞬時のやりとりが発生することを説明した初の論文だった。アインシュタイン自身は、そんなことはありえないと考えていた。つまり、この時点では量子論の理解が進んでいなかったのである。もう1本の論文は「ER論文」(同じくアインシュタインとローゼンの頭文字にちなむ)で、こちらはワームホールについて説明した初めての論文である。ワームホールは当時、「アインシュタイン・ローゼン橋」と呼ばれていた。

これら2本の論文発表から80年以上が経つ現在、大胆な問いが生まれている。もつれた粒子のペアが交信できる理由は、ふたつがワームホールでつながっているからだとしたら? 奇想天外な説だが、これに関する資料を読めば読むほど、面白く思えて仕方がない。実によくできた説だ。ワームホールは──ワームホールが物理的な世界に存在すると仮定してだが──テレポーテーション装置とタイムマシンの両方の役割を果たすということになる。もしかしたら、もっと壮大な可能性だって考えられるかもしれない。


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当然ながら、ここまで述べた内容は今のところSFの話、そして大胆な理論物理学者たちの方程式の中だけにある話だ。

どんな結果になるにせよ、これから数十年、数百年の科学がたくさんの驚異を見せてくれることは間違いない。その知識を、私たちはぜひ賢く活用していきたい。

翻訳=上原裕美子 編集=石井節子

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