「タイムトラベル」「瞬間移動」「ブラックホール」について、科学が今説明できること

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だが、もう少し大胆に想像を広げてみよう。仮に私たちがきわめて小さいサイズ、原子の数兆分の1の大きさになったとしたら、そのとき私たちはプランクスケールという単位の世界にいる。この世界では空間と時間という概念が意味を失い、安定しない量子の不確定性原理が支配している。物理学の既知の法則はすべて破られ、時空は私たちの好きなように変形してありとあらゆる形で登場したかと思うと、あっという間にランダムなカオスの中で崩れていく。このおかしな活動は、「量子ゆらぎ」や「量子泡」という言葉で説明されることが多いのだが、それらの言葉では起きていることの本質は伝えきれない。とにかくこの泡の層では、微小なワームホールが現れたり消えたりしているで、どれかをつかまえて、再び消える前に何倍にも大きくする方法を見つければいい。


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こうしたアイディアを信じる価値はあるだろうか。人類はいつかワームホールを作ることができるのか。ワームホールはタイムマシンとしての働きをするのか。閉じた時間のループが宇宙に形成され、それを使って過去に旅することは可能なのか。

どの質問にも、はっきりした答えはまだ出せない。だが、そんな悲観的な結論で終わらないためにも、フランク・ティプラーの文章を紹介しておきたい。ティプラーはタイムマシンを作るというテーマで初の真面目な論文を発表した物理学者であり、天文学者サイモン・ニューカムのことを引き合いに出していた。ニューカムはかつて、空気よりも重い機械を空に飛ばすことは不可能だとする論考を何本か発表したことで知られている。ティプラーによれば、ニューカムはこんなふうに書いていた。「既知の物質、手法、力をどのように組み合わせようとも、空飛ぶ機械を作れないことは確かだ」

空気よりも重い機械を空に飛ばせることはできない、というニューカムの考えが間違いだったことを、ライト兄弟が間もなく証明したことは、皆さんもご存じのとおりだ。いつの日か同じことがタイムトラベルに起きないとも限らない。タイムマシンは必ず開発されると賭けはしないとしても、こんな考え方をしてみてはどうだろうか──現在の科学理論はタイムマシンが実現する可能性を完全には排除していないのだから、タイムマシンができるとしたらどんな感じになるか、考えをめぐらせてみる理由としては十分だ。単純な好奇心も立派な理由になる。
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翻訳=上原裕美子 編集=石井節子

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