AIで「売れる服」が分かる? DROBEがファッション難民と業界を救う


また、山敷がこだわっているのが、ただの買い物代行になるのではなく、顧客の中にない“正解”を届けること。顧客が事前に欲しいアイテムを伝えたり、DROBEから送られてくるアイテムをウェブ上で確認したりすることもできるが、今まで着たことのないような洋服にも挑戦してもらいたいという。

「店舗でも『目当ての服じゃないものが欲しくなってしまう』ことがあると思いますが、このセレンディピティこそファッションの楽しさだと思います。DROBEでは、スタイリストを介しているからこそ、ご納得いただける形で“発見”や“驚き”をお届けできるんです。ご購入いただいた後に、長く着ていただけることにもつながります」



「売れる服」を予測し、消費されない服を減らす


DROBEでは、「スタイリング AI」で分析・収集したデータを活用して、オリジナル商品の開発も行っている。

継続利用者の多いサブスクサービスのため、顧客の過去のデータから「3カ月後にどのような商品が好まれるのか」などを予測することもでき、本当に購入される商品のみを生産することが可能なのだ。

「スタイリング AI」を活用して生産したペプラムブラウス(1万1000円)とプリーツスカート(1万4960円)

具体的な商品企画は、タグ(商品要素)の組み合わせをいくつか出した段階でAIによるシュミレーションを実施し、それを企画に反映している。例えば「ペプラムブラウス」は、シュミレーター評価の高かったタグ「フリル(裾部分)」×「パフスリーブ(袖部分)」×「ボートネック(首部分)」を組み合わせて商品化したものだ。

「袖部分は半身だけゴムの仕様になっており、きれいに見えつつ袖をまくっても落ちてこないようになっています。データだけに頼らず、こういった定性的な使いやすさもサンプル修正時に加えています」

また、一年間を通じで”鉄板アイテム”となっているのがプリーツスカート。こちらもシュミレーター評価の高かったタグ「ポリエステル」×「ウェストゴム」×「ロング丈」×「(やや)フレアシルエット」を組み合わせて商品化した。

「1stサンプルをつくった際には、トレンドをやや意識して光沢のある生地を採用したのですが、光沢の有無で迷いが生じたので再度AIシュミレーション実施しました。その結果、光沢なしの方が評価が高かったので、光沢の抑えられた生地に変更しました」

現在は実験段階で、約2000着を生産している。長く着られるデザインを意識しているため、シーズン中に売れなかったものは翌シーズンにも販売する予定。そのため、定価で9割以上は消化できる見込みという。

この予測技術や顧客からの意見は、DROBEで取り扱う他社ブランドにも還元している。例えば、「ブランドのターゲットは40〜50代だったが、意外と若い年代の方にも支持されている」「丈の長さが合わなくて返品される方が多かった」など、ブランド側も把握できていなかった細かなデータを提供できるため、重宝されているという。

「今後は、ブランドさんの製品開発にも活かしていただき、業界全体で“消費されない服”を減らしていきたい。そして、“ファッションを楽しめる人”をさらに増やしていきたいです」

文=堤美佳子 取材・編集=田中友梨

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